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うみいろノートNo.21 別の人生

《リレーマガジン》Writers Lab “Code W”では、毎回個人的な生活や想いについて書かせてもらっているけど、今回はそのどれよりも個人的な記事になりそうだ。

最近、詩というものが書けなくなりつつある。その一方で、今着手している長編や毎月連載している小説は以前より楽しく書いている。

改めて、この変化は何だろうと考えてみた。
以前までは短い詩によって今抱えている不満や願望を言葉に変えていた。詩のような短い言葉であれば、創作に時間はあまりかからないし言葉でも伝えやすい。
でも、今はどうだろう。

本に関わる仕事に就き、良くも悪くも現状に満足している部分が大きい。そんな状況でも、創作意欲や小説を書いていたいという気持ちは相変わらずあるし、暇があるなら書くことについて考えていたいと思っている。

詩から小説への気持ちの変化。
それは「小説を書くことによって別の人生を生きてみたい」という願望が強まっている証拠かもしれない。

書店で働いていると、実に様々な人たちが本を求め来店する。
初めて本に触れるだろうお子さんから、人生の岐路に立つ受験生や若者、働き盛りのビジネスマンにベビーカーを押すお母さん、静かな老後を過ごすご老人。

それぞれが求める本へたどり着くために僕は何ができるのか。お客様が買い求める本探しに関わることで、その人の人生の端っこに立たせてもらえている気分になる。

もし、自分が物を書くことに興味がなかったら。
もし、今とは違う何かに惹かれ熱中していたら。
もし、これまでとは全く異なる環境で生まれていたら、どんな本を求めていたのだろう。

そんな、現実ではどう足掻いても歩めそうにない人生を小説という舞台で叶えようとしているのかもしれない。時間がかかっても、その人生を描くことに計り知れない意味を感じる。

こうして分析するほどのことではないかもしれないけど、この記事制作を通して今後も小説を書くことに誇りを持てる気がした。

そして、まだまだ完成されていない物語に触れてくれる読者の皆さんがいなければ、こんな風に楽しく書けていないのは確かなことだと気づいた。
今年は会いたいなあ。いつも応援してくれる温かい皆さんに。心からの感謝を伝えたい。

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進藤海/六月雨音/ようじろう/小宮千明/モグ。4人のライターがそれぞれの担当曜日に、ジャンル問わずそれぞれの“書きたいこと”を発信。

ボイスブックコンテンツ《Writone》より集まったライターによるリレーマガジン。

皆さんから大事な大事なサポートをいただけた日にゃ、夜通し踊り狂ってしまいます🕺(冗談です。大切に文筆業に活かしたいと思います)