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2021年4月

2021年4月の読書メーター
読んだ本の数:7冊

はからずも、旅に始まり旅で終わった4月の読書。
旅したいよね~。ふらっと行って、ふらっとお店入ってさ。

■旅する しあわせ おむすび 具だくさんおむすびとスープのレシピ (昭文社ムック 旅するkitchen)
お腹が空いた。おむすびレシピもたのしいし、ご当地おむすびのおとも情報がすこぶるたのしいおいしそう。
読了日:04月04日 著者:
https://bookmeter.com/books/16608283

■日本怪談集 取り憑く霊 (河出文庫)
なんとも粒ぞろい。はずれなし。実話系怪談とはちがって、読了後に背後が怖くなったりはしないものの、じっとりぞっとする。この人こんなのも書いていたのか!と驚く作家の作品があったりして、力のあるひとはなんでも書けるんだ。それというのは、解説で語られているとおり『怪談は抽象では語れなくて、写実の極致からでてくる』からなのだろう。怖がらせようとあれもこれもゴテゴテわけのわからぬものを盛るあるいは匂わせる(裏でほくそ笑む作家が見えるのは最悪)のでなく、淡々とただそれだけのこと、といった風がこわい。猫が物いふ話、杉浦日向子がまんがにしてたとおもうが、下敷きはこれか?それともどっちにしろ江戸の都市伝説の再録みたいなものなのか。
読了日:04月10日 著者:
https://bookmeter.com/books/13666452

■奇貨 (新潮文庫)
【奇貨】どうしても「普通」にはなれない人達の織り成す、日常。もうどうにも変に突き抜けてしまえれば、あるいは楽々と生きていけるのかもしれないけれど。刺刺しさがなくて、いい塩梅に諦めてるかんじもあって、好きだな。本田さんの苦悩っていうと重すぎて、通奏低音とでもいうべきもやもや感は、性別逆転したわたしではないかと驚き共感することしきり。【変態月】おや、この書体は。教科書体?中学生~高校生という時間を象徴しているようでもあるし、小説中の小説という次元の重なりを表現しているようでもあるし。視覚によるしかけの妙。
読了日:04月11日 著者:松浦 理英子
https://bookmeter.com/books/9210314

■治したくない――ひがし町診療所の日々
よい本だった。というより、よい世界に触れられてよかった、というべきか。人間は、やっぱり人間と一緒に生きていくしかなくて、それには言葉が、語りが必要なんだなあ。特に90・91頁に「それだ!」という言葉が詰まっていた。本で取り上げられているのは主に統合失調症の患者さんだけれど、それ以外の精神科領域でも基本はおんなじだろうなとおもうし、もっといったらとくべつ「病」ではない人間にだって共通することだ。ポジティブな面が強調されているかもしれないけど、なんだか夢みたいで。ルポでこんな多幸感を味わえるのは珍しい。
読了日:04月13日 著者:斉藤 道雄
https://bookmeter.com/books/15676051

■おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are
海外メディア絶賛とのことで我がTLが暫し賑わっており、ほーん、面白そうだなと手にする。淡々と拍子抜けするほどあっさりした読後感。肩ひじ張らない気楽さはのみこみやすさでもある。「おばちゃんたち」がいたらいいなと思ったし、古典の換骨奪胎は好きな手法だし、表題からもうかがえる通り、基本的に笑いを誘う方向へハンドルをきっているのもいい。立ち返って「海外メディア絶賛」への素朴な疑問。メディアはともかく、海外の読者にはどう受容されるのか気になるところ。ぼんやりとでも元ネタを知っていてこその面白みじゃないかな、これ?元ネタしってると引きずられてしまってかえって損なわれるものもあるのかもね。そうかもね。
読了日:04月21日 著者:松田 青子
https://bookmeter.com/books/11243007

■河岸忘日抄 (新潮文庫)
船の腹を打つ水音が聞こえてくるようだった。川の匂いはどうだろう。「彼」は、どうしたものかという思いを抱えて船上生活を送っているに違いないのだけれど、その生活さえも羨ましく見えてしまうのは、いま私自身のいる次元との地続きの気配を感じるからだ。逃げること、待つこと、絶望と冷笑、弱さと強さ、直列と並列。不思議なことに、欲しい言葉がすでにそこに置いてある。いつもそうだ。それで救われたなどと言うのは単純すぎる嘘だから、つかないようにしよう。コーヒーを淹れてデッキに上がる夢くらいはみられたらいいな。
読了日:04月25日 著者:堀江 敏幸
https://bookmeter.com/books/579851

■旅する本の雑誌
恋に恋するじゃないけど、旅を旅すると言おうか、なんとも旅との距離が遠くなってしまった今。紡がれる旅の情景は、何十年もむかしのことのように感じられてならない。疫病がどうにかこうにかなった後も、このころの世界にただ戻るのとは違う世界なんだろうなあという予感がある。掲載されている文章が書かれていたときには、だれも、今みたいな状況は想像もしていなかったんだよねえ。不思議なことだなあ。不思議なときに巡り合わせているもんだなあ。
読了日:04月29日 著者:
https://bookmeter.com/books/13006727

おすすめはなんと言っても『治したくない』。
人間て人間なんだ。もがいても人間としてしか生きていけないんだ……とハッとするのでちょっと読んでみてほしい。
折よく、「寛容を考えるとき一方通行の寛容は成立しない」という意味でまとめられたとあるエッセイを読んだ。Mとmがぶつかるとき、しかし、強いはずのMも傷ついたり不具合を被っている。これもまた真実なのだ。