カイ書林 Webマガ Vol 13 No4

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。  


【新刊案内】

・筒井孝子著:必携 入門看護必要度
定価:2,500円+税 2022年 5月6日発売 

・筒井孝子著:ポケット版 看護必要度
定価:500円+税 2022年 5月6日発売 


【好評発売中】

1 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

2 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

3 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」

4 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

5 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)

6 樫尾明彦・長瀬眞彦:問診から選べる漢方薬ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ②)

7 徳田安春:新型コロナウイルス対策を診断する

8 沖山 翔・梶 有貴編集:ジェネラリスト× AI 来たる時代への備え(「ジェネラリスト教育コンソーシアム」vol.14)


■ジェネラリスト教育コンソーシアムのご案内

・第19回:「チーム医療を本音で語ろう」(2022年夏、世話人:森川 暢、大浦 誠各先生)

* Mook版ジェネラリスト教育コンソーシアムは、科学技術振興機構(JST)の「J-GLOBAL」に収載されています。すでに収載されている「医中誌」とともにご利用願います。


■全国ジェネラリストリポート

だれもが安心して過ごせる医療機関~多様な性のあり方を支持する取り組みから考える~

飯塚病院 総合診療科  金 弘子 

 みなさんの周りに左利きの方はおられますか。では、性的少数者の方はいかがですか。

 私は、2020年初旬から続くコロナ禍に後押しされるように【だれもが安心して過ごせる医療機関の実装プロジェクト】を始めました。以前より健康課題を抱えやすい集団―外国籍の人や子ども、経済的困窮者など―に関心があり、社会の脆弱性が顕在化する中、病院で働くからこそできることがあると考えたからです。現在は性的少数者が直面しやすい課題に取り組んでいます。

 2020年4月から月ごとに学習会を開催、同年10月よりSNS(Social Networking Serviceの略で、登録された利用者同士が交流できるWebサイト)を使って全国の医療者・非医療者、セクシュアリティやジェンダーも多様な仲間と、医療機関における個人の経験や既知の課題、多様な性のあり方に配慮する方策を学んでいます。知識と実装の間にある溝を感じつつ、多忙な臨床現場へ具体的な取り組みとして落とし込むことを目標に試行錯誤する1年半を経ました。性別欄の削除などの施行に加え、実装の支援ツールを作り始めました。ご興味ありましたらご連絡ください。

 左利きの人は日本人人口の5.8%(17人に1人)¹、性的少数者(シスジェンダーかつヘテロセクシュアル以外の人)は8.9%(11人に1人)²との報告があります。利き手のように目に見えないからこそ、同僚や患者にもいるかもしれないと考え、その方が困難に遭わず、職場もしくは受診先として「安心して過ごせる医療機関」だと感じられるように活動を続けようと考えています。

*1博報堂生活総研による定点調査(2020) *2電通によるLGBTQ+調査2020


■マンスリー・ジャーナルクラブ

マクロライドが気管支喘息に本当に有効かどうか:システマティックレビュー

東京北医療センター 総合診療科 光本 貴一, 岡田 悟

Macrolides versus placebo for chronic asthma. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Nov 22; 11(11) PMID: 34807989

 気管支喘息は一般人口の1%から18%に影響を与えると推定されている. 重症の気管支喘息には吸入ステロイド(ICS)に加えて長時間作用型β刺激薬(LABA)などで治療されるが難治であることは変わりない.

 マクロライドは抗菌作用に加えて抗炎症作用があり, その2つの作用で喘息の症状を改善することが示唆されている. マクロライドが気管支喘息に本当に有効かどうかシステマティックレビューを用いて検討がされた.

<内容の要旨>

方法:
 気管支喘息の小児と成人に対してマクロライドを4週間以上内服した場合, 入院を必要とする発作, 重症発作(ER受診または全身ステロイド投与, またはその両方を必要とする増悪), 症状スケール, 喘息コントロール指標(ACQ), 喘息の質生活アンケート(AQLQ), 1日あたりのレスキューの使用回数, 朝と夕の最大呼気量, 1秒間の強制呼気量, 気道過敏性, および経口コルチコステロイド用量がプラセボと比較してどの程度改善するのかを2021年3月までのCochrane Airways Group Specialized Registerを用いてシステマティックレビューで検証した.

結果:
 25件のランダム化比較試験,計1973人の気管支喘息患者が組み入れられ,GRADEアプローチとで解析された.マクロライド投与群はプラセボ群と比較して,入院を必要とする発作が減少(odds比0.47, 95%CI 0.20-1.12; 研究= 2, 参加者= 529; 中程度の確実性)し, 重症発作も減少した(rate比0.65, 95%CI 0.53-0.80; 研究= 4, 参加者= 640; 中程度の確実性). その他の結果に関しては患者と介入の非一貫性や不精確さが原因でエビデンスの質が低いと判断された.

結論:
 マクロライドは重度の気管支喘息を持つ人々の発作を減らすことができるが, 患者と介入の非一貫性, 不精確さ, 出版バイアスのためにエビデンスの質が担保されているとは言い難い. 今後の研究で効果がすべての重症喘息のタイプで持続するかどうか, 生物学的製剤との比較, 治療中止後も効果が持続するかどうかの検証が必要である.

<コメント>
 
吸入ステロイドとLABAを使用してもコントロールが難しい気管支喘息の治療法としては生物学的製剤があるが, 価格面も考慮するとハードルが高いように感じていた. 本システマティックレビューではマクロライドの投与量と投与頻度が異なる, 喘息の重症度が異なる参加者が含まれている, 発作の報告および増悪と重症度の定義は研究によって異なっている, というバイアスがある.Gibson 2017 (Lancet. 2017;390:659-668. PMID 28687413)の患者数が圧倒的に多いため,全体の結果はこの研究が大きく牽引しているものの,非一貫性を考慮しなければマクロライド使用で救急外来受診あるいは全身ステロイド投与を減らす可能性があることがわかった. したがって, Gibson2017の研究からはICS/LABA併用にも関わらず喘息発作をおこして救急外来受診あるいは全身ステロイド投与が必要となっている18歳以上の喘息患者には, アジスロマイシン500mg週3日の48週間投与で救急外来受診あるいは全身ステロイド投与が減らせるかもしれない. 実際の使用例としては生物学的製剤を使う前の選択肢として, TPOを考慮しつつ喘息発作を起こせないような重要なライフイベントを控えている患者に対して有効かもしれない.


■カイ書林図書館

新しい看護必要度シリーズが刊行開始されました。

1)必携 入門看護必要度
・2022( 令和4) 年度診療報酬改定での「重症度、医療・看護必要度」の「評価票」を掲載し、これを丁寧に説明しています。
・具体的な項目を説明した研修の動画をダウンロードできるQR コード付きで、初任者研修にも自習にも最適です。

2)ポケット版 看護必要度
・2022( 令和4) 年度診療報酬改定における「重症度、医療・看護必要度」の「評価票」「評価の手引き」を全文掲載しています。
・ポケットに入るコンパクトサイズで持ち運びできます。
・いつでもどこでも評価項目の疑問に答えることができます。


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