カイ書林 Webマガ Vol 13 No9

このメルマガおよびWebマガは、弊社がお世話になっている先生方に毎月配信します。毎月「全国ジェネラリスト・リポート」と「マンスリー・ジャーナルクラブ」を掲載しています。


【近刊案内】

・医療者のためのリーダーシップ30 の極意 
 Sanjay Saint&Vineet Chopra, 翻訳:和足孝之

A5判 116ページ カラー30ページ ¥2,750 10月末刊行 ISBN 978-4-904865-64-4


【好評発売中】

1梶 有貴、長崎一哉 編集:ジェネラリスト×気候変動―臨床医は地球規模のSustainability にどう貢献するのか?(ジェネラリスト教育コンソーシアム Vol.17)

2 筒井孝子著:必携 入門看護必要度

3 筒井孝子著:ポケット版 看護必要度

4 鎌田一宏・東 光久編集:再生地域医療in Fukushima(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 16)

5 東 光久編集:「患者力」を引き出すスキル・ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ③)

6 金子惇・朴大昊監訳「医療の不確実性をマッピングする」

7 島田長人編集:急性腹症チャレンジケース―自己学習に役立つ18症例(日本の高価値医療シリーズ⑦)

8 石丸裕康・木村琢磨編集:ケア移行と統合の可能性を探る(ジェネラリスト教育コンソーシアム vol. 15)

9 樫尾明彦・長瀬眞彦:問診から選べる漢方薬ツールキット(日常診療ツールキットシリーズ②)

10 徳田安春:新型コロナウイルス対策を診断する

 

■次回ジェネラリスト教育コンソーシアムのご案内

第18回 看護必要度を使って多職種協働にチャレンジしよう(オンライン開催)

とき:2022年10月23日(日)13:00~16:00の3時間
世話人:筒井 孝子(兵庫県立大学大学院 社会科学研究科教授)
    東 光久(奈良県総合医療センター 総合診療科部長)
    長谷川 友美(白河厚生総合病院 副看護師長)

企画趣旨:今回のコンソーシアムは、弊社の新刊「必携 入門看護必要度」(筒井孝子先生著)の発刊記念として行います。 
看護必要度は、2つの点で重要です。
1.医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士、ケアマネジャーなどすべての医療者が、看護必要度によって患者の状態を共通言語で把握できます。
2.事務職は病院経営というマクロ的視点でとらえていますが、その本質を理解するのに看護必要度は役立ちます.

当日は次の2部構成で行います。
https://drive.google.com/file/d/1cJGoui5L1e_a_JgXQ059-Euwrfq6ik68/view?usp=sharing

参加申し込みはこちら。
https://forms.gle/Zb8tnTeT1G6TWktL6

* Mook版ジェネラリスト教育コンソーシアムは、科学技術振興機構(JST)の文献データベース収録(JDreamIII、J-GLOBAL等)および「医中誌」に収録されています。


■全国ジェネラリストリポート

「少年老い易く、学成り難し。」

社会医療法人 祐愛会織田病院 副院長/総合診療科部長 織田良正

「少年老い易く、学成り難し。」小さい頃、祖父によく聞かされた言葉である。当時祖父はどんな気持ちで私にこの言葉を復唱させていたのか最近よく考える。

2007年に佐賀大学を卒業してから16年が経過した。どんな大人も例外なく言うことだが、本当に早かった。卒後は心臓血管外科で研鑽を積み、卒後8年目に地元に戻ってからは循環器内科を軸に診療した。そして卒後11年目から2年間、佐賀大学総合診療部で研鑽を積み、今は総合診療医として地域医療に従事している。その時々で必要とされることを選り好みせず診療してきたが、様々な場面で得た引き出しはすべて私の宝だ。

心臓血管外科での日々は、救急対応の自信となり、医師としての基礎体力のベースとなっている。毎晩寝る前の電話でのICUの患者の状態確認は、今取り組んでいる遠隔診療に大いに役立っている。

専門医も取得し意気揚々と地元に戻ったが、後ろ盾が少ない地域医療の厳しさ、そしてやりがいを知った。

地域医療に携わるほど自分の診療の限界を知り、総合診療の門を叩いた。大学病院で総合診療を学んだが、そこには心臓血管外科同様に診療の専門性があり、診療科に対するPassion、Prideがあった。

それなりに進路相談などを受ける年齢になったが、最後には、「医師免許があるならいいじゃないか。」と伝えている。これだけ人の役に立つことができ、「学成り難く」やりがいのある職業は他にはないという思いを、年を経るたびに強くしている。


■マンスリー・ジャーナルクラブ

米国成人の2型糖尿病患者において、治療目標達成に伴う余命の延長について

東京北医療センター 総合診療科 内木場 香美, 岡田 悟

Potential Gains in Life Expectancy Associated With Achieving Treatment Goals in US Adults With Type 2 Diabetes. 2022;5(4):e227705.doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.7705

米国において,糖尿病リスク因子のコントロールは最適とは言えない.最適化による利点について評価されたものは未だない.HbA1c,収縮期血圧(SBP), LDL-Cの低下や,BMI(肥満度指数)の適正化による,2型糖尿病患者の余命の延長を定量化した.

<内容の要旨>
方法:ACCORD研究から算出された2型糖尿病患者の余命を予測するBuilding, Relating, Assessing, and Validating Outcomes(BRAVO)シミュレーションモデルを使用した.しかし,ACCORD試験の研究参加者は血管リスクが高い2型糖尿病患者であったので,米国の一般成人2型糖尿病集団に近づけるために,National Health and Nutrition Examination Survey(2009年~2010年)で較正を行った.その後,このモデルを用いて,調査対象者の余命のシミュレーション実験を行った.データは2015年1月から2016年まで分析した.

結果:
BMI値が41.4の人と比較して,BMI値が24.3,28.6,33.0と低くなると,それぞれ平均3.9年,2.9年,2.0年の余命延長と関連していることが示された.

収縮期血圧160.4mmHgの人と比較して,収縮期血圧114.1mmHg,128.2mmHg,139.1mmHgと低くなると,それぞれ1.9年,1.5年,1.1年の余命延長と関連していることが示された.

LDL-C146.2mg/dLの人と比較して,LDL-Cが59 mg/dL,84.0 mg/dL,107.0 mg/dLは,それぞれ0.9年,0.7年,0.5年余命が増加した.

HbA1cを9.9%から7.7%に下げると,平均3.4年の余命が延長した.しかし,7.7%から6.8%へのさらなる低減は平均0.5年の余命延長としか関連せず,6.8%から5.9%は余命延長の利点がない(余命が0.1年短くなる)という結果になった.

結論:
これらの結果は,臨床医が推奨される治療目標を達成するために患者のモチベーションを高め,米国における糖尿病治療の改善に向けた介入やプログラムの優先順位付けに活用することが可能である.

<コメント>
本研究では,心血管疾患の既往がある人を除外しており,血管リスクの高い2型糖尿病患者には適応できない.

BMI低下が最も推定余命延長効果が高いという結果になったが,BMI値が41.4の人と比較していることや,日本では米国よりも心血管死亡率が少ない点からは,本研究結果を日本人に適応する場合には注意が必要と考えられる.

HbA1cを5.9%まで減少しても余命延長効果が得られないということは,これまでの研究結果とも合致しており,糖尿病治療の目標下限を意識することが重要である.

■カイ書林図書館

世界の名著の翻訳書 近刊!

 
Thirty Rules for Healthcare Leaders(医療者のためのリーダーシップ30の極意)

著者:Sanjay Saint, MD, MPH、Vineet Chopra, MD, MSc. 翻訳:和足孝之

本書は、米国の医療現場の第一線でリーダーとして活躍してきた豊富な経験から得た、実践的なリーダシップとマネージメントの考え方と、経験に基づく教訓が満載です。

【日本語版に寄せて Sanjay Saint】

本書が,現在の職種や役職に関係なく,医療に携わる全ての日本のリーダーたちの重要な指針になることを心から願っています.

本書で述べた30 の極意は,私たちが長年にわたって臨床と研究の分野でリーダーシップを発揮して続けてきたことから得られたものです.また,日本を含む世界中の優れたリーダーを観察することで得た教訓でもあります.これらの凝縮した経験に基づく学びは,次世代の医療職のリーダーにとって必ず役立つと信じています.

本書の翻訳には,和足孝之先生に多大なご協力をいただきました.彼の仕事に対する献身的な姿勢と細部へのこだわりは,この本をより楽しく読めるものにしてくれました.また,徳田安春先生には長年懇意にしていただき,優れた医療リーダーになるための道へと導いて頂きました.感謝の念に堪えません.

最後に,読者の皆さまがこの本を心から楽しんで,そして日本の医療界のリーダーたちの輝く未来を願って.

ドーモ アリガトウ!

※本書は本年10月末に刊行予定です。

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