旧姓を通称になんてどこで出来るのですか?その2

旧姓の通称使用が広まっている。
そう判決文に書き終わった裁判。

前回の離婚から数年。
私は再婚した。
旧姓を通称使用など出来ない事を前回の結婚で思い知らされていた私は、
夫になる人に姓を変えたくないと言い、
夫が「婚姻届なんかただの手続きに過ぎない。事実婚で行こう」

しかし。
事実婚では不妊治療は出来るが助成金がおりない。
夫は事実婚で私を保険年金の3号に入れる手続きをしてくれたが。
会社から「うちの社で事実婚で3号に入れた前例はない。籍を入れなさい」
3号に事実婚配偶者を入れないのは列記とした法律違反だが。
入れなくても罰則はないのだ。
勿論家族手当など出ない。
配偶者控除も勿論出ない。
計算してみると年間200万近くの費用が婚姻届を出さないと余計にかかると分かる。
家も探し、いい物件が見つかったが。
建ぺい率オーバーの為ローンを組める金融機関が限られ、
それはどこも共有名義にするなら法律婚が条件。

夫は
「婚姻届を出すなら俺が改姓するから」
しかし、夫の職場は男性社員は旧姓使用を認めていない。
改姓の痛みを嫌と言うほど味わった私は、
「二つの名前を使うのは一度も二度も同じだ」

又改姓する事とした。

先に事実婚で別姓の夫婦の友人のアドバイスを貰い。
年賀状は二人の別姓の氏名を書き、
「結婚してもお互いの氏名は変えません」

これで来る郵便物は8割方私の旧姓で来たが。
「そんな事旦那さんに申し訳なくて出来ない」
「戸籍姓でないと郵便物は届かない」
「旧姓なんか使ったらダメ。又離婚する」

年賀状が途絶えた人はやはりいた。

「旧姓を通称使用とするのは広まっているのではないですか?」

婚姻届を出す前に。
使うあてがない住民票と印鑑証明を山ほど取った。
離婚しない限りこの名前で住民票と印鑑証明はでないのだ。
泣きながら大量の住民票を取る。
隣で泣きそうになり
「ごめんな・・」
うつむく夫がいた。

婚姻届は笑顔で出させてくれ。

家の登記の手続きの時。
「あの住民票と印鑑証明、まだ取って3ヶ月たっていない!」

不動産は価格の半分は私の貯金から。
半分は夫のローン。共有名義。

出す貯金は私が私の名前で築き上げた資格とキャリアで出来たものだ。
どうしても登記は私の名前でしたい。

その住民票と印鑑証明で、私の氏名で登記の手続きをしようとしたとき。

不動産屋さんが。

「もう入籍したんでしょう?○○さんなんて人はもうこの世にいないんですよ!」

「旧姓を通称使用するのは広まっているのではないですか?」

私は婚姻届を出したのであって死亡届を出した覚えはない。

家を売るときに登記を改姓手続きしたらすむ話だ。

その改姓手続きに何十万円もかかると知ったのは数年後。

不妊治療や、それで見つかった病気で通う病院は全て戸籍姓となり。
呼ばれても気がつかない、名乗り間違う、書き間違えるは日常茶飯事。

「旧姓を通称使用するのは広まっているのではないですか?」

そして私はある日突然緊急入院する。
遠方長期出張で夫は来れない。
最悪命にも関わると言われ、一旦帰宅し、震えながら荷造りをし、持っている口座の通帳と便箋封筒を全て荷物に入れ、入院する。

苦しみながら入院手続きに書いた書類は全て戸籍名。
書きながら
「誰だよこれ。」
「死ぬときはこの名前でしか死ねないのか」

「旧姓を通称使用するのは広まっているのではないですか?」

苦しみの中、自筆遺言の書き方を調べながら
全ての口座の番号を書き、不動産の住所を書き、
「全て夫に相続」

署名も戸籍名。

「旧姓を通称使用は広まっているのではないですか?」

一週間後。
「すぐに手術です!」
どうか生きて手術室から出してくれと、
又「誰だよこれ」
戸籍名を山ほど書く。
長期出張中の夫にも連絡する。

すぐに運ばれた手術室で。
一旦麻酔で眠ったはずの私の意識が戻った。
何が起こったんだ?
周りが騒然とし、手術が始まる前に数人だったスタッフが。
倍に増えて私を押さえ続け「分かりますかっ」

私は今まさに死にかけているのか?
恐怖で叫び続けた。

もう一度麻酔から覚めた時。
遠くで夫の名前で叫ぶ人が何人もいた。
腕をつかまれ何かをされていた。
「やはり私は死んだのか。」

すると。
夫が私の旧姓を叫び
「俺や!分かるか?」

夫は手術の連絡を受け、新幹線で5時間かけて病院に来てくれ、
戸籍姓で呼ばれているため自分が呼ばれているのだと気がついていないと分かったのだ。

「来てくれたん・・」
で、
私の意識が戻っているとされ、処置は終わった。

意識確認の時。
本人の名前を呼んでどう反応するかは重要な判断基準だ。

しかし。
病院以外では私の名前しか名乗っていない私は。
戸籍名では返事が出来ないのだ。
旧姓を使っていると。
最悪命に関わる。

無事退院し、体調がもどり、就職活動を始めた。
「呼び名と名札だけ旧姓を使わせて下さい」
山ほど履歴書を書き。
面接に回った。
その場で「そんな事は認められません」
採用連絡→辞退。

「旧姓を通称使用する事は広まっているのではないですか?」

旧姓使用を快諾してくれた職場に就職する。
が。
勤務して初めて知ったが。
その職場に旧姓使用勤務者の前例は無かったのだ。

改姓手続きは義務化されているが期限も罰則もないのをいいことに私の氏名で置いていた資格者証はそのまま出し。

何かの書類を書くたびに上司が
「?どっちの姓を書いてもらうか・・」
一々本部に連絡を取ってもらう。
「申し訳ございません」頭を下げる。

「旧姓を通称使用するのは広まっているのではないですか?」

間に合わないときは二つ書類を作り。
下の名前で印鑑とシャチハタをオーダーで作った。

「旧姓使用は事務所だけが把握して、他の職員には一切言っていません」

これ以上ややこしい人は出したくないのだと「忖度」し。

旧姓の話になりそうになれば。
すっとその場を離れる日々。

旧姓を通称使用が広まっている?

初婚の時から16年。
判決文から4年。

変わっていません。全く変わっていません。
マイナンバーが出来てから余計出来ていません。
以前みたいに素知らぬ顔で旧姓で履歴書などもう書けないのです。

旧姓の証明にしか使えない旧姓併記の住民票を職場に保管して貰い。

「あ、どっちの姓か・・」
「申し訳ございません」
の日々を過ごしている。

夫とは。
「俺が先に死んだら俺の死亡届を出したその足で復氏届を出せ」

死に別れてからしか。
旧姓をどこでも使うことが出来ない事を知った夫からの。
悲しい約束をしている。

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