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白トラ弐24 知らないでいると、ただ恐いだけ

 翌朝、兄が奇怪なことを言い出した。

「すまんけど、喪服(もふく)あとで送ってくれんか?」

『これは、昨夜未明に気配を表したヤツに言わされているに違いない!』
 ピーン!と来た白へびは「荷物で送るとしわが付いたり、型が付いちゃったりで後々面倒だよ?」と思いつく限り郵送することのデメリットを並べあげて持って帰るよう必死でうながした。
「う~ん‥、分かった」
兄はしぶしぶ了解した。

 『冗談ではない。このまま居座られてたまるか!ただでさえ元々4畳半の部屋に何か居る臭いのに。兄貴と一緒に部屋から出てってくれよ!』内心そんな感じだった。
 居座られても何も出来ないのだ。

 兄が帰路についた日、100均で白い小皿x6スーパーであら塩を買ってきた。

 玄関にあら塩をたっぷり盛った小皿を、寝室の四隅にも盛り塩小皿を配備。そして玄関の外や家の気になる所、庭側にも塩をまいた。これでもう近寄れまい!

 後日、職場のオカルト好きの先輩にコレを話した。すると‥
「え?!家にあげる前に、お葬式から帰って来た人の背中にお塩をパラパラかけたりしなかったの?」
「何ですかそれ?そうするもんなんですか?」
「じゃないの?何かくっつて来た時の用心で‥」

 又、同席していた見えないものが見えちゃう系の先輩は‥

「あ~、それお腹すいてたんですよ。あ~ぁ、おいかえしちゃったぁ~。食べ物御供えしたりして鎮静化できたかもしれないのにぃ~」
「えっ!じゃぁ、また来たりするんですか?」
「いや、だってほら、塩まいたんでしょ?盛り塩したんでしょ?荷物もって帰らせたんでしょ?締め出したようなもんだからまた来るってわけではないと思いますけど」

 どうやら、うまく往なした(いなした)ようだった。

 お作法さえ知っていれば、『迷える魂を上に上げてあげることが出来た』ということを言っているようだ。

「でも、うちに来られても、どうしようもないですよ?」
「まぁ、そうでしょうね。仕方ないですね」

 というのが、西東京市保谷(ほうや)で暮らしていた時、得体の知れぬ気配に包まれたことがあるという体験談である。

 霊現象と言えば霊現象、金縛りと言えば金縛り、催眠の延長と言えば催眠の延長。

 しかし、見えない存在に対する対処方法として、迷わず御経なり盛り塩なりで対処したのは事実で、それらの対処によって素人が行ってもとりあえずの効果があるというのも簡易的な対処としては有効だと分かった。

 この頃はまだ、見えない存在に対して正直恐怖心を隠せなかった。知らなさ過ぎて。

 つづく

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