白トラ参12 白い赤ちゃんへびに遭遇する 続き2
『居ない!!‥いなくなっちゃった』
*
あまりに変なことが起きた。
無数に重なる元気いっぱいの葉っぱの上に白へびはいたはずだった。居なくなったということは、下に滑り落ちたのか?しかし、音がしなかった。
聞こえるのは空高く飛び回るトンビの声か、眼下に広がる街から伝わるかすんだ音くらいだ。風もなく葉っぱがこすれ合う音すらしない。
仮に白へびが飛び降りたなら、葉っぱが揺れているはずだが、それも散見されない。
僕はそこそこ田舎で育ったくせにその当時、叢(くさむら)に分け入るのはまぁ少しは出来ても、草が覆い茂り先が見通せないところには手を突っ込む勇気はなかった。
にもかかわらず、青くさい葉っぱという葉っぱを思い切ってかき分けて白へびの行方を探した。
苔(こけ)の生えた溝しかない。
そこに白色はない。
20分か30分ずっと探したが、見つからなかった。
*
そういえば、どうしてその場所を通ったのか?
友達のうちに遊びに行くでもなく、何となく近所を散策していた。何の目的もなくただ家を出て、何となくその場所を歩いたにすぎない。
結局、白いへびが見つからないので諦めて家に戻った。
自宅へ足を運び出した一歩目を踏み出した時からだろうか、白いへびを見た事実を誰かに話そうという思考にならないし、そもそもそんなものを見たことすら頭に無かった。
当時5歳である。普通5歳くらいの子どもともなると、承認欲が爆発したような時期のはず。にもかかわらず、誰にも話さないまま一切思い出さないまま30年が過ぎた。
つづく