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確実な1歩 第4節サウサンプトン戦

1.試合結果

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結果は0-0のスコアレスドロー。MVPはアントニオを完封したサリス。反対にいつものプレーが出来なかったアントニオはフラストレーションを溜めいらないファールが重なり退場。次戦のマンチェスターユナイテッド戦は欠場です。途中出場はヤルモレンコとヴラシッチ。特にヴラシッチはウェストハムデビュー戦でありながら落ち着いたプレーと高いIQとスキル、フィジカルの強さを短時間で見せつけ、今後をかなり期待せざるを得ないインパクトを残しました。

2.サウサンプトンのビルドアップvsウェストハムのプレッシング

前節のクリスタルパレス戦とこの試合を見て改めて再確認したのですが、プレミアリーグのチームはどこもかしこもちゃんと強いなあと。楽に勝ち点3を狙えるクラブは皆無だと。このサウサンプトンも非常に手ごわい相手となりました。

・サウサンプトンのビルドアップvsウェストハムのプレッシング

開始1分で早くも見られた構図ですが、何度かウェストハムのプレッシングを攻略された場面が見られました。

①バックパスでウェストハムのハイプレスを誘導するパターン

訂正*エンネシリ→エルユネシ

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毎度のところ中盤で手厚くブロックを固めるウェストハム。DFライン4枚+中盤4枚の4-4ブロックはなかなか崩すにはパワーが必要です。さらには昨季から前線からの整理されたハイプレスで敵陣深くでボール奪取を狙う形も増えてきています。なので相手が中盤でウェストハムのブロックに阻まれ、DFラインにバックパスする場面になるとすかさず全体的にラインを上げてSHの選手も積極的に相手SBまでプレスを仕掛けます。ですがサウサンプトンはこのバックパスを使って前進を試みます。

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中盤のブロックからSHの選手が飛び出し、相手SBへとプレッシングを掛けますが、ウェストハムのDFラインはレドモンド、ジェネポに自陣深くピン留めされ、いつものようにラインを上げられない状況。さらには1トップに位置していたアームストロングが偽9番中盤に降りることで数的優位を作られてしまう。この試合のアームストロングの偽9番はかなり厄介でした。

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よってフォルナルスのところで3v1を作られ、攻撃で積極的にプレーできる右SBのリヴラメントにボールを渡されてしまい、ピン留め+アームストロングの偽9番で数的有利を作られたウェストハムはなかなかチェックに行けずズルズルと後退。スペースのある逆サイドのジェネポへとサイドチェンジされます。結果的にはボーウェンの献身的な戻りでピンチには至りませんでした。

②ビルドアップからのフィニッシュの部分

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サウサンプトンは数的優位からしっかりとビルドアップしてきます。ウェストハムも相手SBからチャンスメイクされたシーンがあったので両SHがSBにチェックに行ける距離感で待っていますが、前線のプレス隊は数的不利。サウサンプトンは両CBがフリーなら果敢にドリブルで持ち運び、前線のラインを越えてきます。この場面ではサリスのドリブルで前線のエルユヌシへのパスコースを作ろうとします。

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ここはアームストロングの体勢も少しきつかったのか少し浮いたパスになり、ツォウファルが何とか頭でクリアしたものの、ドーソンがアームストロングのチェックに行って空けたスペースにエルユヌシが侵入。ここは徹底されていた。そのまま点に絡める動きでもありますが、ウェストハムのDFラインを収縮され、大外のジェネポにスペースを与え、1v1で仕掛ける時間とスペースを作ります。この試合ではジェネポが非常にキレのいいドリブルからのチャンスを演出していました。

3.ウェストハムのビルドアップvsサウサンプトンのプレッシング

ウェストハムのビルドアップはこれまでロングボール主体のビルドアップのみでしたが、昨季途中からはショートパス主体のビルドアップも挑戦しています。

この試合のサウサンプトンはアームストロング、JWP、エンネシリの3人がプレス隊。DFラインがボールを持つとボランチを見ながら果敢にチェックしてきます。ですがSHの選手は基本SBを見ており、前線のラインを越えてさえしまえば中央はロメウ1人になる場面が多発。ロメウ自身もあまり深追いせずに中盤の底でバランスをとる事を優先していました。

・ロングボール主体のビルドアップ

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こちらはいつも通りのロングボール主体のビルドアップ。このビルドアップは前からはめられたときの保険でもあります。

ウェストハムのビルドアップの中心はライス。彼が蹴るサイドチェンジの質は非常に高いです。なのでDFラインのボール回しを円滑にしつつ、反対側へのCBに対するロングパスでドーソンにフィードを蹴る時間とスペースを供給します。反対にソウチェクがCBとRBの間に入ってロングボールを蹴る場面もあります。そのためロングボールのこぼれ球を回収するべく、アントニオの近くでプレーするため、2列目の選手はビルドアップにあまり関わず高い位置にいます。

この試合ではアントニオのところにボールが収まらず、サリスにほぼ完封されてしまいましたが、まったくチャンスにならないということもなく、二列目のボール回収の準備が良く、何とか前進しチャンスになる場面もありました。

アントニオも人間ですから永遠に自分より大きい選手たちとロングボールを競り合うことは出来ませんし、こぼれ球を回収できるかどうかは運もかなり絡んできます。そのためウェストハムはショートパス主体のビルドアップにも果敢に挑戦します。

②ショートパス主体のビルドアップ

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ウェストハムのショートパス主体のビルドアップは確実と言っていい程に3バック-2CDMの陣形になります。ライスがDFラインに降りれば2列目の選手が、右肩上がりの3バックの時はライスがそのままソウチェクの横でプレーします。そのシチュエーションに合わせて2列目の選手や、時にはクレスウェルが中央に移動しソウチェクの横でプレーする場面も見られました。このソウチェクに対するサポートが肝になってきます。

この場面ではライスが降りてウォードプラウズのプレッシングを誘います。そしてオグボンナにバックパスをすると思わせ、アームストロングを引き付け空いた中央にいるソウチェクへ。ここにフォルナルスが降りてくることでソウチェクのサポートも忘れません。しかしここではリヴラメントがマンマークでフォルナルスについてきています。ここでアントニオが3人目としてパスコースを提示。アントニオに渡し、結果前を向くことは出来ませんでしたが、これをまたライスまで戻し逆サイドにサイドチェンジし、相手のプレッシングが間に合う前にドーソンが前に持ち運んでベンラーマにフリーのベンラーマに渡したりとまだ粗削りではありますが、相手を動かしつつ、フリーマンを作って前進させるビルドアップは出来ていました。



4.課題になったフィニッシュ

この試合ではプレッシングがそこまで効かなかったものの、献身的な戻りでブロックを再形成し粘り強く守った。ビルドアップは及第点。ですが結果はスコアレスドローで試合を終えました。

今まではカウンターで相手の陣形が整わないうちに仕留めていたのがウェストハム。今回みたいにアントニオが封じられた試合で縦へのスピードアップが難しい中、しっかりDFラインを5枚、場合によっては6枚いる中、大外からのクロスで点を取るのは厳しい。後半もセットプレーやクロスのこぼれ球をサウサンプトンは前線に送り込み、前で残っていたアームストロングや後半途中から入ってきたブロヤに決定機を作られました。

モイーズはこれを見てバイタルで勝負が出来るヤルモレンコを投入。少し引きすぎなサウサンプトンのDFラインで空いたバイタルで左足を振りぬきますが枠には飛ばず。最後のワンプレーもアントニオのパワープレーに託しますが、ここもサリスがはじき返し、アントニオはこのこぼれ球を懸命に追うもジェネポに危険なスライディングタックルをかます形になってしまい、痛恨のイエロー2枚目。試合終了1分前で退場。次節のマンチェスターユナイテッド戦はアントニオを欠いたメンバーで臨むことになりました。

そして試合はそのまま終了。スコアレスドローにて勝ち点1を分け合う形になりました。

そしてヴラシッチは見事なプレミアリーグ復帰を遂げました。

ベンラーマの代わりに入り右サイドでプレーすると、サイドに張ってクレスウェルとのコンビネーションでサイド深くでボールを受けると、サイドに張ったことで出来たSBとCBの大きく空いたチャンネルを見て一気にスピードアップ。あっという間にペナ内に入るとニアに突っ込んできたアントニオに低く速いクロス。アントニオはこのクロスに上手く合わせることは出来ませんでしたが、この試合で一番ゴール期待値が大きかったプレーでした。

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このプレーを交代で入って30秒も経たずにウェストハムデビュー戦の1stプレーでやってしまうヴラシッチ。とんでもないです。

そしてこの男までにボールを集める事。相手プレッシングを回避し前進することが出来つつあるウェストハム。この試合でゴールこそ取れなかったものの、まだズマという隠し玉がいます。ELではディオプと組んだズマですが、引いた相手に対してガンガン持ち運び、2枚目の力を借りずに、彼らを高い位置に残しつつビルドアップの精度を上げていました。少しずつですが昨季よりもチームは強くなってきています。あとはバイタルでのアイデア、クロスやセットプレーの精度やケミストリーを上げていけばプレミアリーグ、ELでも明るい未来が待っているはずです。


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