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GOLDEN SISTERS

ゴールデンシスターズ 第5話

12月の空は、チャコールグレーの雲が広がって何となく切ない。あと2週間もたてば、サンタが街にやってくる季節。やがて、夜のとばりが下りる時間。

沙羅の部屋。

クリスマスツリーが飾られ、ベッドにはサンタのコスチュームを着たクマのぬいぐるみが置かれている。

沙羅、わっとベッドに泣き崩れる。

アンティークな両面鏡の一方で、メイクを直していた42歳の沙羅はスツールから立ち上がり、ベッドに歩み寄る。18歳の沙羅は、ベッドに仰向けになると部屋の天井を見つめた。18歳の沙羅の目には涙が溢れる。

18歳の沙羅 「どうすればいいのかわからない。スミさんもいなくなったままだし、誰にも相談できない」

42歳の沙羅、ベッドの端に腰掛ける。

42歳の沙羅 「せっかくオーディションに合格したのにね、パパやママは猛反対。10000万人の応募者の中から、合格できたのはたった2人、すごいことだよ!」

18歳の沙羅 「何度話しをしてお願いしても、ゼッタイハンタイなんだもの」

18歳の沙羅は、枕に顔を押しつけてしゃくり上げた。

42歳の沙羅 「さて、どうする?迷っているの?」

18歳の沙羅 「迷ってなんかいない」

42歳の沙羅 「そうよね、タチバナ悠生はあなたの運命の人になるかもしれない」

18歳の沙羅 「タチバナ悠生は、憧れの人だった。彼のレコード会社のオーディションに行けば会えるかもしれない、ただそれだけの軽い気持ちだった。結果は、どうでも良かったのに・・・」

2人の声は、途中からユニゾンのように重なり合っていった。

42歳の沙羅 「あの瞬間、運命の人だと思った・・・そうよね!まだ、昨日のことのように覚えている、今でも胸がキュンとする、ドキドキするの」

そう言って、42歳の沙羅はベッドから立ち上がり、両面鏡の片方を覗き込んだ。

42歳の沙羅 「今でも悠生の腕の中に飛びこみたい、悠生が恋しい!」

「やめて!」18歳の沙羅は、両耳を塞いだ。それから、ベッドから立ち上がり、両面鏡のもう一方のスツールに腰掛けた。

2人の沙羅は、大きなアンティークな両面鏡に向かい合った恰好で、鏡の中を覗き込んでいる。

42歳の沙羅 「わたしは、どうしてあのオトコに恋をしたのだろう?」

18歳の沙羅 「あなたにもわからないの?」

42歳の沙羅 「そうね、わたしにもわからない、ていうか、わからなくなったと言った方が正しいかも。だから、もう一度、あなたに尋ねたのよ。困ったわね・・・ほら、あなたのそばにいる恋のキューピットも、まだ少し迷っている」

42歳の沙羅は、もうひとりの沙羅の背後を、少し意地悪そうな顔で指差した。18歳の沙羅は、慌てて自分の後ろを振り向いた。

18歳の沙羅 「いじわるしないで」

42歳の沙羅は声を立てて笑うと、スツールから立ち上がり、部屋のキャビネットサイドボードの引き出しにしまってあった宝石箱の中から、何かを取り出して18歳の沙羅に手渡した。

42歳の沙羅 「大事にするといいわ」

18歳の沙羅 「これって・・・?」

42歳の沙羅 「さっき恋のキューピットが放ってくれた恋の矢、あなたにあげる。あなたのものよ」

                    つづく

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