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流行性感冒後ノ脱毛及ビソノ療法

新型コロナの後遺症、「脱毛」。
はじめて聞いた時は「えっ、コロナで髪が抜けるの?それも感染して相当経ってから??」とかなり驚いた。

感染症専門医の忽那医師の記事によれば

脱毛は特定の感染症に罹患した後にみられることがあります。
例えば、
・エボラ出血熱
・デング熱
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
などでも回復期に脱毛がみられることが報告されています。
脱毛が起こる原因ははっきりとは分かっていませんが、感染症に罹ったときの精神的・肉体的なストレスによるものと考えられています。

とのこと。

先日、国立国会図書館デジタルコレクションを眺めていた時、インターネット公開されている中外医事新報(戦前の日本で刊行された医学の学術雑誌)第953号(大正8年12月5日発行)の中に

『流行性感冒後ノ脱毛及ビソノ療法』

として、その前年から日本でも流行していたスペイン風邪での脱毛について書かれている文章を見つけた。

脱毛3

『流行性感冒後の脱毛及びその療法』
ルイス、メリアン述

脱毛は去年の流行性感冒の頻繁なる合併症のひとつで、患者は頭髪の全部を失う人が多かった。
脱毛は感冒に罹ってから80~100日を経過した後に始まるのが普通である。
このような突発的脱毛は多分感冒の毒素が毛根を侵すことによるものと思われる。
ピンクス氏によればこの脱毛は古い毛髪(羅病後2~3か月を経過した)の脱落で、その後に新しく生まれくる若き毛髪のために押しのけられたものである。
なので、時日を経るにつれて新しい毛が成長してきて、元に戻る。
毛髪の障碍をこうむる程度は人によりて異なるし、又部位によりて同じからず。
治療法はおおよそ次のごとし。(以下略)

※正確な書き起こしではありません。大体こんな感じの事が書かれているのね、という程度の引用です。

と、かくかくしかじかの軟膏を塗布してうんたら、という治療法が続いている。

忽那医師の記事と中外医事新報の記事とを比べるといくつかの違いはあるものの、どちらも「罹患後、だいぶ経ってから抜け始めて、いずれ新しい毛髪が生えてくる」のは共通している。

興味深いと思ったのは、忽那医師の記事では脱毛を「後遺症」と表現していて、中外医事新報の記事では「合併症」と表現していること。
そして、脱毛が起こる原因について忽那医師の記事には

はっきりとは分かっていませんが、感染症に罹ったときの精神的・肉体的なストレスによるもの

とあり、中外医事新報には

多分感冒の毒素が毛根を侵すによるものと思われる

とあること。

今では耳にすることの多い「ストレスによる」という見立ては比較的新しいものなのかな。

なお、忽那医師によれば

一般的に感染症による脱毛症は自然に改善すると言われていますが

とのこと。
中外医事新報にある治療法がどういうものなのかは専門家じゃないのでわからない。
軟膏を塗るという当時の治療法は、日にち薬以上に効いたんだろうか。

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