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『投下』 (小説_約8万)

 白い鳩の大群が空を旋回する。地上で煌々と燃える炎を嘲笑うようにぐるぐるぐるぐる、そして少しずつ旋回の輪を大きくしていく。姿が見えなくなるまで、ぐるぐるぐるぐる、遠く遠くへ飛んでいき、最後にはぼんやりと鼠色の雲に溶けていく。  そこで平内大洋(ひらうちたいよう)の記憶は途切れている。 小学生の大洋は平和祈念式典に、クラス代表として参加していた。全校生徒から募った平和の折り鶴千羽を原爆の子の像の元へ届ける役を背負って、広島市内の小学校から、担当の子供たちが毎年八月六日に平和祈念

    『投下』 (小説_約8万)