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【福井県坂井市】文学碑「悠々として急げ」

 北陸新幹線が今年3月、福井県敦賀市まで延伸しました。これによって東京から福井県内へのアクセスはずいぶんとよくなりました(大阪方面からだと、敦賀より東に行くには乗り換えが必要になり、やや不便になった気もしますが)。

  県内で開業した4駅のうちもっとも東に位置し、東京からのいわば玄関口にあたる芦原温泉駅から車で20分ほど行ったところに、坂井市丸岡一本田という集落があります。開高健の祖父・弥作と祖母カネの出身地です。住宅が並ぶ一角を抜けると集会所「一本田福所集落生活改善センター」があり、その前には、高さ2㍍近い巨岩が置いてあります。地元有志らが1994年に建てた開高健の文学碑です。正面には開高が好んで記した「悠々として急げ」の文字が刻まれていました(冒頭写真)。

一帯は水田地帯。後方には北陸新幹線の高架が見える

 ここからさらに車で5分ほど走ったところに坂井市立図書館があります。玄関口には「中野重治記念文庫 丸岡図書館」の看板が。中に入ると、坂井市出身のプロレタリア作家、中野重治(1902~79年)の特集コーナーが充実していました。残念ながら開高健をフィーチャーした棚は見当たりませんでした。

丸岡城のすぐ近く

 坂井市で生まれ育った中野と、祖父母らの出身地という開高とでは、地元の扱いが違うのはやむを得ません。ただ、小玉武「評伝 開高健」(ちくま文庫)によると、祖母カネの旧姓は中野。中野重治の家とは軒が接するような近くに住んでいました。開高自身も中野重治をよく読んでいて、<祖母カネが重治と遠縁にあたると、すこし楽しそうに語ったことがある>そうです。開高健の福井への思いを感じるエピソードですね。(池)


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