見出し画像

【東京・四谷】広東料理「嘉賓」

 5月に81歳で亡くなった俳優の中尾彬さんは食通で有名でした。テレビ番組で覚えているのは上野精養軒のロケ。名物のビーフシチューを食べて、「あれ、今まで感じたことのない甘みがあるな」と渋い低音でつぶやき、料理自慢のお笑い芸人によるそっくりシチューであることを見破ったのには驚きました。

 その中尾さんが足繁く通った中華が、四谷の広東料理「嘉賓(かひん)」。カキソース和えそばをよく頼んでいたそうです。細めの中華麺にオイスターソースをからめただけのシンプルな一品で、見た目は実に素っ気ないのですが、穏やかながら奥深い味わいがクセになります。行くたびに周りのテーブルを不審がられない程度に眺めると、8割方が注文しています。

嘉賓の代名詞的な一品

 開高健も嘉賓のカキソース和えそばを好んでいました。編集者らと来店すると、まず前菜代わりにおこげなどとともに人数分ずつ頼んだとか。ふつうならこれだけでお腹いっぱいになるボリュームです。ある編集者は「開高さんは、たくさん食べ、たくさん飲む人間でなければ信用しなかった」と説明してくれました。

広東風おこげ

 中尾さんは開高ファンでもありました。亡くなる数年前から終活に取り組み、本なども大半を処分したのですが、最後まで手元に残したのが吉行淳之介と開高健でした。武蔵野美大で油絵を学び、フランス留学経験もある中尾さんは、美術への造詣も深かった開高に親近感を抱いていたのでしょうね。(池)

嘉賓
新宿四谷1-7 第3鹿倉ビル 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130902/13000987/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?