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学問としての会計学の会計学⑦会計学とは何か

1.会計学とは何か


 会計学が広義で用いられる場合、財務会計論、管理会計論、原価計算論、監査論、税務会計論、国際会計論などの専門科目を含む総称です。しかし、狭義の会計学は、財務会計論を意味します。また、財務会計の制度を中心とした専門科目が財務諸表論です。ただし、財務会計論と財務諸表論とが同じ意味で用いられることもよくあります。
 会計学の分野でも会計行動を合理的に説明し、それを観察データで実証するという研究が行われています。そうした研究でも、観察データによる実証の対象となる会計行動に対する合理的説明が前提となります。当然、会計行動の合理的説明には財務会計の理解が必要です。
 また、財務会計の対象である企業の活動は、発展・変化しており、それに対応して新たな会計処理が必要となり、そのための会計基準が新設されるという場合があります。ここでも新たな企業の活動に対応できる会計基準の開発には財務会計の理解が前提となります。
 かつては、財務会計は、簿記の学習の延長線上で教えられていました。しかし、簿記の延長線上での説明が有効なのは、原価モデルと呼ばれる取得原価主義会計です。1970年代ころから一部の先進国で時価による評価が財務会計に導入され始め、1980年代に入ると一部の有価証券等の評価に時価が本格的に導入されました。そして、欧米では「時価」に換えて「公正価値」という用語が一般的になりました。
 この公正価値評価は、簿記の延長線上にあるわけではなく、これによる会計を公正価値モデルと呼びます。現在の財務会計は、原価モデルと公正価値モデルからなる「ハイブリッド会計」です。
 原価モデルの主な適用領域は、棚卸資産(通常の販売目的)と有形固定資産です。それに対して、公正価値モデルの主な適用領域は、株式をはじめとする有価証券の一部と棚卸資産(トレーディング目的)です。  

2.「もうけ」の配当と課税


 個人が用意する「元手」だけでビジネスを始めることができますが、例えば、一気にビジネスを拡大するために、複数の人々から「元手」を集めることもあります。会社は、複数の人々から「元手」を集めるための仕組みです。この場合、「もうけ」は、「元手」を出した人々に「元手」の割合に応じて配当します。その配当の根拠として、「もうけ」の金額を「元手」を出した人々に報告する必要があります。
 また、「もうけ」に対して法人税や事業税といった税が課されます。例えば、固定資産税は、土地や建物といった目に見える有形のものが課税対象です。しかし、法人税や事業税は、税の世界では「もうけ」は、所得と呼ばれる「もうけ」という計算の結果としての無形のものが課税対象です。

 このように、「もうけ」の計算の結果は、「元手」を出した出資者や課税当局に報告されます。会計は、「もうけ」の計算であると共にその報告も含む行為です。そして、計算される「もうけ」は、その配当にあずかる出資者にとっても、課税当局にとっても正しい「もうけ」でなければなりません。そこで、正しい「もうけ」の計算を追及する学問として近代会計学が成立しました。近代会計学は、20世紀初頭からドイツとアメリカで確立され、発展してきました。
 会計学名著紹介シリーズ第1回ではではアメリカの近代会計学の代表としてペイトンとリトルトンという2人の学者が著した『会社会計基準序説』を紹介しています。そして、同シリーズ第2回ではドイツの近代会計学の代表として、シュマーレンバッハの『動的貸借対照表』を紹介しています。 

3.受託責任と会計報告


 元々会計は、ある目的の下に委託されたお金(下図の町内会費)について、その目的どおりにつかわれたどうかを報告し、受託者(町内会)の責任(会計責任)を解除するために行われます。したがって、下図における出資者(委託者)と会社(受託者)との間で行われる会計報告も同じ構造です。

 但し、町内会にその会費をビジネスで増やすことを期待する会員はいませんが、会社の出資者は、それを期待して出資します。そのため、会社の会計報告にはビジネスの顛末、すなわち「もうけ」の計算も組み込まれることになり、その分複雑な計算となります。
 

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