怪獣着ぐるみリョナ2

バイト先の先輩にまた呼び出された。
廃棄予定の怪獣があるから、また怪獣になって斬首されたいという。
かなりストレートな要求に笑ってしまったが、僕も密かに楽しみにしてたことなのでOKした。

倉庫に行って、今度はちゃんと打ち合わせをした。
言葉で何をしたいか言う先輩は恥ずかしそうだった。

着ぐるみに着替え、今回は動画もとりたいということで定点のカメラを置いた。

今回の怪獣は、なんとアクターが四つんばいになって演技する四つ足怪獣だった。
四つ足怪獣はほとんどアクションができないので、ショーでは敬遠される。
僕まで動きづらい着ぐるみだと成立しない気がしたので、僕はヒーローになることにした。
細かいことであるが、本編でも何回か怪獣を惨殺したことのあるダークなヒーローを選んだ。

まずはヒーローと怪獣の立ち回り。
やはりほとんど怪獣が動けないので、ヒーローが動いて殺陣を成立させる。
いつも四つ足怪獣と戦うとき思うが、弱いものイジメをしている気持ちになって気がのらない。

程なくヒーローが四つ足怪獣の首根っこを踏みつけた。
動けずジタバタする四つ足怪獣の首をつかみ力任せにひっぱると、ぶちぶちぶちと首がもげた。

四つ足怪獣は、首の断面を地面に擦り付けながらあたりを這いずり回った。
右回りに、左回りに、ちぎれた頸の断面を地面に擦り付けながら悶え苦しんだ。
その勢いで仰向けにひっくり返ると、手足を勢いよくバタバタもがいた。

ひっくり返った怪獣の頸の断面に向けて光線のポーズをすると、四つ足怪獣はビクンとのたうって事切れた。

二人でビデオを確認した。
定点だしスマホの映像なので、映像自体のクオリティは低いが、思い出の記録としては十分だった。
特に先輩が考えてきたであろう、失った首を地面に擦り付ける苦しみ方は面白かった。
ヒーローの中で人知れず興奮してしまった。

せっかくなのでもう1ラウンドやることにした。
僕は今回も衣装チェンジして、宇宙人に着替えた。
この宇宙人は、怪獣ハンターで怪獣を食材に料理をするために怪獣を飼っているという設定だ。

まず怪獣が宇宙人に突進してくるが、ひらりとかわされ壁に顔面を激突した。
痛みに悶絶してゴロゴロしていると、仰向けになったときに宇宙人にまたがられてしまった。

宇宙人は手早く胸の中心にナイフを突き立てると、それを肛門のあたりまですーっとおろして腹をかっさばいた。
中から赤い肉片みたいなものがもりもり出てきた。

怪獣の腹側に新しくファスナーを付け、その中に赤いウレタンくずを詰めておいた。
ナイフをひきながらファスナーを開けただけだが、内臓には見えないもののなんとなく伝わる見た目だ。

腹を割かれて手足をバタバタともがき苦しみだした怪獣を無視して、宇宙人は淡々と怪獣の喉に刃を入れ、あっという間に怪獣の頸を切り落とした。

怪獣は激しくのたうち回り、ゴロゴロ暴れながら色んな物にぶつかっている。
宇宙人は細い槍のようなものを持ってくると、怪獣の露出している脊髄にするすると差し込んでいった。

バタバタと暴れてた怪獣はピタッと止まり、その姿勢のままグググと力が入り、そこからゆっくりと力が抜けて弛緩し動かなくなった。
宇宙人は手早く赤い肉片を腹から取り除くと、怪獣の足を持って引きずっていった。

動画を確認すると、今回もよくとれていた。
怪獣の脊髄〆なんて世界初の映像かもしれない。

後日先輩が動画を送ってくれた。
動画はこのとき送ってくれたものであるが、音声が追加されていた。

怪獣がヒーローに痛めつけられる音、頸を無理やりひっぱるときのボキボキブチブチという音と断末魔の叫び、その断面があまりに痛むからかそれを地面にこすりつける音、ヒーローに光線でとどめを刺され会場の体の芯が焼け焦げる音。
宇宙人に腹を開かれる音、頭を失って動脈の血がゴホゴホ喉に流れ込みながら息をしようとする怪獣の声、怪獣がのたうち回ってあたりのものを壊す音、脊髄にズブズブやりを刺される音、暴れていた怪獣が急に静かになる音。

映像だけだと粗が気になる部分は多かったが、音が入るとかなり良いと思った。
これは自分でも興奮してしまう。


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