あの日、俺は異世界へとやって来た②

ジジィから渡されたマップを頼りに俺の住まいがあるという場所に来てみたが、そこは築70年は経っていそうな見るからにオールドなボロアパート。
中に入るも、床は今にも抜けそうで風呂場は恐ろしくカビ臭い、そしてトイレはボットン・・・バリューもクソもあったもんじゃねぇ。
俺に、こんな所に住めと言うのか⁉️・・・やはり、あのジジィ、K○ll しておくべきだったか。
とはいえ、右も左も分からない以上、今夜はここで寝るしかねぇ。

角中から渡された晩飯の弁当を食べ、手渡されたスマホで色々調べてみるが、こちらの世界で起きているリアルタイムの出来事は地上での出来事と微妙に違う事に気付く。
死んでいるはずの人間が生きている事になっていて、生きているはずの人間が死んだ事になっている。
やはりここが何処なのか分からない・・・あの世というのとは、やはり違う気がするし考えれば考える程、混乱する。
もう一度我妻ちゃんや、反町に電話を掛けてみるが、やはり同じく現在使われていないとのアナウンスが流れるばかりだ。

あれこれ自問自答を繰り返してみたが答えは出ず、そんな状況に嫌気が刺し、横になってもみたが眠れそうもねぇ。
弁当と一緒に入っていた缶コーヒーを飲み干した俺は、思いきって外に出て街を歩いてみる事にした。

歩けば歩くほど、あの街に似ている・・・というかやはり瓜二つだ。
しかし、あるはずの建物が無かったり、無いはずの建物があったりと位置状況も微妙に違う。
俺達がアジトにしていた建物も、ここには無く代わりに別の建物が建っていた・・・試しに我妻ちゃんを探してみるが、当然見つかる訳も無い。
コンビニに寄り、詳しい地図を見てみるが、地名までもがおかしい事を知る。

東京都→塔京都
黒焉街→白焉街
空龍街→海龍街
貴凛町→麒麟町
花宝町→枯宝町
村雨町→春雨町
志正町→不正町
朱雀町→白虎町
綾波町→嫌波町
久遠町→不遠町
雲雀町→鶲(ひたき)町
竜桜町→鳳桜町
琥珀地区→誤爆地区

土地の形状は、ほぼそのままだが地名は全て↑のように変わっている・・・やはり考えると頭が痛くなる。
道行く住民を捕まえ、ここが何処なのかを聞くも『白焉街ですよ。』などと一様に同じようなアンサーが返って来る。

方々を歩き回り疲れたのか、気が付いたら公園のベンチで眠ってしまっていた・・・
ふと、誰かに声を掛けられ目を開けてみたら、見知らぬ女が立っていた。
自称霊能者の“美奈子”と名乗ったその女は、何かを知っているようで、あれこれ問い詰めてみたが、ここは地上で未練を残した者や、業を重ねた者が来る地であり、この地から出る術は解明されてなく、本人の思考と行動次第で時空の歪みが生じ、浄土の世界に行く事も出来れば煉獄に行く事もあるとだけ言うと、忽然と消えて行った・・・

少し放心した状態でベンチに腰かけたまま、俺は冷静に考え頭の中を整理し、先程の女の言った言葉の意味やこの街の事を考えた。

“異世界転生”、“パラレルワールド”、“平行世界”・・・都市伝説として、このような話は聞いた事があり、YouTubeでも見た事はあった。
勿論、このような非科学的・非現実的な話など俺はバリューは無いと思ってたし信じちゃいなかったが、現実問題として今置かれてる自分の状況を振り返れば、異なる世界へ来てしまったと言わざるを得ない。

気が付けば陽が昇り始め、明け方になっていた。
俺は再びボロアパートへと戻り、ひとしきり悩んだ末に、この現実を受け入れる覚悟を決めなければならないのだと悟った。

こうして、俺のこの地での第2の人生が始まった・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?