『異世界車中泊物語』は「ご都合主義異世界ファンタジー」の限界を乗り越えられるか?
【ただの「異世界もの」に見えるのだが……】
マンガ『異世界車中泊物語』の最新刊である第四巻を読みました。これが、意外にといっては何だけれど、面白い。
タイトルやあらすじだけを見たならよくある「異世界もの」のバリエーションのひとつでしかないように感じられるのだけれど、どういうわけか胸に迫るものがあるちょっと不思議な作品です。
むしろ、この手の「異世界もの」に飽きてきている方にこそオススメしたい、そういう物語だといって良いでしょう。
ただ、そうかといって、それではどこが具体的に面白いのかというと――うーん、どこだろう。
物語は、仕事で大失敗をしたあげくテキトーないいわけをして逃げ出してしまったダメ人間の主人公が、偶然(かな?)、ある異世界に迷い込むところから始まります。
そこでかれはお約束通りにひとりの少女と出逢い、彼女と心を通わせることによってほんの少しだけ成長します。そして、それから現実世界に戻り、社会人としてもわずかにレベルアップしていくことになるのです――と、こう書いてもこの面白さは伝わらないだろうなあ。
というか、この記事を書いているぼく自身がまだうまく物語の核心を把握し、言語化できていない気がする。ペトロニウスさんのブログ「物語三昧」でも、やっぱり言語化できていないと語られていますね。
そのくらい、一見すると非常にわかりやすいごく単純な異世界ハーレムラブコメの類型に見えるにもかかわらず、どこか異質な印象を受けるうまく把握しづらい作品なんですよね。
いや、その「どこか違う」というのもあくまでぼくがいっているだけに過ぎないとそうなのだけれど、たしかにぼくのゴーストが囁いている、これはふつうの「異世界もの」とは何か違っていると。
それじゃ、具体的に何が違うのかといえば――ぐぬぬ、何だろう。
どうにもうまく表現できないのだけれど、あえて言葉にしてみるなら、この『異世界車中泊物語』は「現実」と向き合っていると思うのですね。
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