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今こそ見るべき一作! Netflixドラマ「ボクら見る目」解説&感想 #BlackLivesMatter

「海外ドラマフレンズ」は、海外ドラマ好きの26歳女性と29歳男性が海外ドラマについて自由に楽しく語るアカウントです。YouTubeポッドキャストで音声配信もしてます。今回取り上げるのは『ボクらを見る目』です。

作品紹介

現在、アメリカミネアポリスで起こった白人警官によるジョージ・フロイドさんの殺害事件とそれをきっかけしたブラック・ライブズ・マターの運動が広がっているが、それに伴って『僕らを見る目』も再注目されている。

「僕らを見る目」はNeflixオリジナルのドラマシリーズで、2019年5月に配信された。1シーズン完結のリミテッドシリーズで全4話、1話70~80分前後配信直後に、アメリカ国内における1日あたりの視聴回数を更新。史上最高記録を達成した。

本作は1989年4月19日に発生したセントラル・パークにおけるジョガーの性的暴行事件をベースとしている。のちに報道などで「セントラルパークファイブ」と呼ばれる5人の黒人とヒスパニックの有色人種の少年たちが強姦の罪で逮捕され、のちに冤罪であることが発覚をしたという事件だ。

事件の詳細は本作やネットなどで調べることができるので詳しい説明は省くが、5人の少年は警察のずさんな捜査と酷い取り調べにより、無理やり自白をさせられた。

恫喝や脅しは朝飯前で、未成年なのに取り調べに保護者を立ちあわせなかったり、それぞれの少年に「あいつがやったと言えば家に帰してる」と言って証言を引き出したりと、有罪前提での捜査と取り調べにより少年たちは起訴され、裁判となる。結果、5人とも強姦罪で有罪に。

5人に少年の内、ケヴィン、アントロン、ユセフ、レイモンドの4人は15歳以下だったため少年刑務所に行くが、5人の中で唯一16歳だったコーリーは成人として有罪判決を受けた。5人が服役し出所した後の2002年に事件の犯人と名乗る男が自白したことで、5人の無罪が証明される。

制作スタッフ

原案、監督、脚本をエイヴァ・デュヴァーネイとが務める。代表作に「グローリー/明日への行進」「13th -憲法修正第13条-」など。オプラ・ウィンフリー、ロバート・デ・ニーロも制作総指揮として参加した。

キャスト

・ジャレル・ジェローム(コーリー・ワイズ役)
ムーンライトの親友役の青年期を演じた。

・ジョン・レグイザモ(レイモンド・サンタナ・Sr 役)

・ヴェラ・ファーミガ(エリザベス・レデラー役)
→マイレージライフなど。

・ファムケ・ヤンセン(ナンシー・ライアン)
→X-MENのジーン・グレイ役。

・リース・ノイ(マティアス・レイズ)
→ゲーム・オブ・スローンズでデナーリスに民衆の前で処刑されるミーリーンの民の役。
https://gameofthrones.fandom.com/wiki/Mossador

以下ネタバレありの感想

感想①見ていてとにかく辛い気持ちになるが……(29歳男性)

ひたらすら理不尽な展開が連続するので、観ながら本当に辛い気持ちなる。ただ、事件の捜査や裁判については前半で描き切り、後半は刑務所内や出所後の生活など、5人の人生にフォーカスを当て丁寧に描いている。それが余計に失った時間の大きさを感じさせ、警察の酷い捜査や司法制度の問題を際立たたせていると思った。

最後は無実がわかろ5人が名誉を取り戻すところで終わるが、決してそれスカッと終わり方ではない。5人はすでに刑の執行後であり、失った時間は戻ってこない。無実が明らかになる展開も意外とあっさりしていて、本作最大の悪役である女性刑事は裁かれることもなければ反省した様子も見せない。

当たり前だが復讐してすっきり、というストーリーじゃないということ。でもそれこそが現実だ。歴史改変復讐劇はタランティーノに任せたいと思った。

また、コーリーワイズ役のジャレル・ジェロームが見事だった。彼だけ5人の少年のうち、子ども時代と刑務所入って以後の大人時代を両方演じるのだが、まず見た目の変化がすごい。本当に歳を取ったと思えるくらいに、一人の人物の振れ幅を見事に演じていた。

感想②まずは「学ぶ」という選択肢(26歳女性)

BLMに対しての接し方や態度について悩んでいる人も多いと思う。「抗議する」「運動に参加する」などさまざまな選択肢があるが、「勉強する」という項目もあって、自分はそこから始めてみようと思った。その勉強という意味でも本作は役に立った。

「構造的人種差別」と呼ばれるものついて、本作を見て理解することができた気がする。KKKのようなあからさまな人種差別について知っていたつもりだったけど、システムが自動的に黒人を犯罪者に見せるというのは、こういうことなのかと。

トランプが事件当時少年たちの「死刑」を求める新聞広告を出したという話があったが、そのことについても本作では描かれている。そのトランプが大統領であるという現在……なんてことだ!

路上で警察に職務質問などをされた時に、スマホで撮影しているシーンを映画などでたまに見かける。最近だとフランスの映画だけど『レ・ミゼラブル』とか。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の何かの回で、「逮捕される瞬間にスマホで絶対に撮影しているようにしているんだ」と黒人の人が言っていた。今回のジョージ・フロイドさんの件もそうだったが、動画を撮れるということは、今回のようにすぐSNSですぐ拡散されるということでもあるし、黒人にとっては自衛でもあるのだ。

でも日常的にそうしなきゃいけないって、本当にとんでもない状況だ。今回の件でいい方向に世の中が変わってくれたらいいと切に願うし、同時に日本の問題にも置き変えて考えてみないといけないと思わされるドラマだった。

関連作品

人種差別等について描いた映画
『13th -憲法修正第13条- 』
『フルートベール駅で』
→ブラックパンサーのライアン・クーグラー監督で、マイケル・B・ジョーダン主演。
『投獄 カリーフ・ブラウダーの失われた時間』
『プロット・アゲインスト・アメリカ』
『ストレイト・アウタ・コンプトン』
→ファックザポリスのNWAの伝記映画
『レミゼラブル』フランス

冤罪もの
『デビルズノット』
→「ウエストメンフィス3」と呼ばれた3人の少年の冤罪事件について描いた。ブラックメタル好きで悪魔崇拝者とされた少年たちが、偏見によって冤罪に巻き込まれていく。
『リチャード・ジュエル』
→ある爆破事故を救った警備員が、英雄から一転して犯人だと疑われていく。軍事マニア、いい歳して実家住まいなど
→2作とも「偏見」が生んだ冤罪を描いてると思うが、彼らは白人であり、人種とは別の偏見だった。黒人は黒人というだけで逮捕されるということがどれだけのハンディキャップなのか考えさせられる。

現在、Netflixで「Black Lives Matter: 黒人とアメリカ」というカテゴリが新設されたり、ドキュメンタリー映画『13th -憲法修正第13条-』がYoutube上で無料公開されたりなど、BLMについて学びやすい環境となってきているので、ぜひ観てみてほしい。

音声でも話しています↓


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