大爆笑ボロズボン少年

昔、都内に住んでいた高校生だったころの話。
幼なじみのよっちやんとは、よく埼玉の山の中に電車で釣りに行ったものです。

東武東上線に乗って一時間程の距離にある小さな清流でした。
関東でいうヤマベ、ハヤという小魚だが当時は、面白いようにたくさん釣れたのでした。

竿先をぶるぶると震わせビシビシビシっと水面から魚が引き抜かれる手応えの快感は今もなお筋肉を司る神経がその感触を覚えているらしく、直ぐに映像と感覚が蘇ってくるのです。
1日中そんな風に釣りを楽しんで家路に帰る休日は僕らにとってとても貴重なものでした。

そんな釣りに行った晴れたある日のことです。さらさら流れる清流の川上から仕掛けを着けた浮きを流しているよっちやんが目の前に立っている時がありました。
しかもよく見てみると、古ぼけた綿生地の丸ズボンの尻の穴あたりに人差し指1本程が入りそうな穴が開いているではありませんか。

ん?

にやにやにや。なにやらくじのあたりを引いたに近い気分が。

私は、この上もないワクワクした気持ちになりながら、あることをしたくなりました。

皆さんだったらどうしますか?
どうしたい衝動に駆られますか?

✳そうですよねー!

速攻!指突っ込んで穴おっぴろげたくなっちゃいますよねー!

当然私も奴のホールが眼前に姿を現した瞬間!間髪入れずに人差し指を第二関節までぶっ込んで右横一文字に力一杯引き裂いてやりました。

ビーーーっ‼

ボロキレが鈍い悲鳴をあげて、尻の縫い目に沿って五センチ程裂けました。

「ナワーーッ‼ お主っ!何するっ」

よっちやんは河面に顔面を突っ伏しそうになりながらも自分の尻を庇い、半分笑いながら後ろを振り向きました。

穴の避け具合の方は、思ったよりも逝きませんでした。
残念です。

でも、大自然に抱かれながら私達はまた釣りを続けました。
そうこうしていると時間もお昼近くになり、魚の方もあまり釣れなくなってきたので川原で昼食のおにぎりを食べることにしました。

腰を下ろして座りやすくするために二人で場所をならしていたその時、またチャンスの女神は突然舞い降りてきたのです。

そうです。気を抜いたよっちやんは、五センチ程裂けたあの微笑ましい奴をうっかり私の眼前に披露してしまったのです。

千載一遇の大チャンスです。

今度は、失敗は許されません。

私は、三本指を両手で同時に突っ込み、手のひらを外側に向けおもいっきり左右に引き裂きました。

ピィーーーーっ!ピィっ!ピピーーーーっ!

膝まづいて大広間の襖を力一杯開かんばかりのスタイルは、満全のパワーを私に与えてくれたのです。

「なーーーーーっ!お主っ!お主っ!」

よっちやんは、今回ばかりは今までにない危機感と恐怖を感じたらしく、血走って見開いた目を投げつけて、満身の抵抗を施してきました。

しかし、それがかえって仇となり、縫い目に沿って裂けていく力に拍車をかけることとなってしまったのです。

ボロズボンの穴は、上はベルトのループ下まで、下は股下のチャックを固定する部分までに達し、さらにあまり余ったパワーは、抵抗したがために余計にパワーアップされ、両足の方へ回ってしまったのです。

その強烈なパワーは、チャックのところから両足内側の縫い目に沿って膝下までを引き裂いてしまいました。

もはやズボンには見えず、ふくらはぎのところが繋がった布の短冊を身にまとったアホな少年という感じです。

私は、自分でやっておきながらも、その滑稽な姿がおかしくておかしくて、もう息が出来ないくらい腹を抱えて笑い転げました。

やられた本人も当初は険しい表情をしていましたが、やはり自分の滑稽な姿に笑ってしまって、にやけていました。

クソボロズボンの替えがあるわけでもなく、買い替える金なぞ持ち合わせているわけもなく、裁縫道具もありません。
あっても縫う技術もありませんが。

なによりも最悪なのは、クソ薄汚れたブリーフが歩くたびにあらわになるボロキレを身にまとって都会の雑踏を抜けて帰宅しなければならないことです。

まあ、私の最大の狙いはそこにあったわけですが。

さあ待ちに待った帰宅の時間です。

私は、よっちやんの数メートル後ろの位置を確保しがらパフパフとボロクソズボンがブリーフを見せたり閉じたりするようすを腹を抱えて笑いながら着いて歩いていきます。

電車は座れたので、しかも裂け目を上手く隠していた為にちょっとつまりませんでした。
しかし、このあとの超見所である大都会を想像すると居ても立ってもいられないワクワク感に浸れました。

さあ、電車は自宅のある駅に到着しまた。

おー、既に電車内の人たちも一斉に視線を向けてきました。

よっちやんは、顔面を赤らめながら先ずは改札を足早に突破しようと思いきや、切符が見当たらずボロキレ短冊のあちこちをひっくり返して探しています。

私は、ついでだったので非情にもふくらはぎでつながった部分も引き裂いてやろうと思い、またもやスキをついて後ろからボロキレを引き裂きました。

すると、今度はふくらはぎ部分はおろか前のチャックの縫い目部分にまでも力が加わってしまい、ボロズボンは、腹の部分だけがつながったブリーフ丸見えの前後が開いたスカートのような状態になってしまいました。

もうよっちゃんは無言でにらみ返してきます。

私はひるまずに大笑いをしながら距離をおきました。

そしてその滑稽な姿にもう可笑しくて可笑しくてゲラヘラと大笑いをして遠まきに眺めていました。

なんとか切符を見つけて、大笑いを堪えている駅改札の人に渡して道路へ出ると、大勢の驚きの眼を一斉に浴びながらゴキブリのように左右にジグザグに視線をかわすように走り去っていきました。

夕方とはいえ、まだ明るいし買い物客も多い商店街から家までは15分はかかります。

私も大笑いで笑い転げながら後ろを走って着いていきました。

いやあ本当に楽しかった。笑いすぎて腹が二~三日ずーっと痛かったのを覚えています。

薄汚れたブリーフ完全丸見え。変なハカマみたいなズボンだかなんだかわからない恰好。今でも鮮明に光景がよみがえってまいります。

とても楽しい一日でした。

よっちゃん。ありがとーーー。

因みにこの行いは、私が極悪非道な者に映るかもしれませんが、彼に対しては初めての私の行為でした。幼少の頃から私は彼から同様な行為、いやそれ以上に非道な行いを受けてきたので、所謂御返しのつもりであることをお知らせしておきます。

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