太陽がもっとも近づくとき… 近日点について 1月3日
みなさん、新年あけましておめでとうございます🎍✨
昨年から太陽活動が活発になり北海道でもオーロラが見えたりと話題になりましたが、大晦日にX5.0、元旦にM4.7の太陽フレアがあり、太陽系もセンセーショナルな幕開けでした。地上でも能登半島地震や旅客機事故などが起こり、なんとも身の引き締まる年始ですね。
ときは辰年ですから、龍体のような日本が動き始めたとも見えるわけですが、なるべく天文現象や占いと天災を絡めて危機意識を煽ることは控え、人事を尽くして眼前の出来事に向き合い、私も粛々と暦を刻んでいきたい思います。
被災されている方のご無事と一刻も早い復興を心から願っております。
さて今回は、夏の遠日点に引き続き、冬の『近日点』についてお話したいと思います。耳慣れない天文用語だとは思いますが、簡単に言うと、地球と太陽との距離の『遠近』のこと。
これは日常では気づかない些細な変化ですが、これは天文や暦にとっては実に大きな要素なんです。なにしろ、これは暦が変わるほどの大問題だったのですから…
江戸時代の改暦をテーマにした映画作品『天地明察』の中で、『日の軌道がずれておる…』という名セリフがありますが、その大きな理由のひとつとして、この遠近の差がありました。
なぜ、このように大きな影響があるのかというと、例えば一年を365.2421…と、どんなに正確に算出したとしても、惑星の楕円軌道における遠近の差(離心率)を理解していなければ、春分、夏至、秋分、冬至、などの間の日数が正確に把握することができないからです。
大ざっぱに言うと、惑星の動きは“くるくる”という一定の速さではなく、“ぐるーんぐるん”と長縄を回すときのような、速さにグルーヴの違いがあり、そのため二至二分などで円(公転軌道)を四等分すると日数に明確な違いが出てくるのです。
地球暦をすでにお持ちの方は、地球軌道の7月上旬と、1月上旬を見比べ見てください。その遠近の差によって、上半期が187日間に対して、下半期は179日間と例年7〜8日間もの変化が生じていることがひと目で理解できるよう図示されていることに気づくはず。
私自身も時空間地図を作る上で、この軌道の遠近(離心率)がこんなにも大きな変化をもたらしているとは驚きでした!しかもそれを正確に作図しないと、地球暦が成り立たないほど重要な天文学的要素だったのです。
惑星の軌道はすべからく楕円形をしています。つまり太陽にもっとも近づくときと、もっとも遠ざかるときがあるということ。そして、この点を通過する瞬間を天文学的には「近日点」と「遠日点」と呼んでいます。
そして、この周期は約21000年ほどかけて動いており、約1万年すると夏至の頃に近日点が来ることになります。実際に13世紀には近日点が冬至のあたりにあり、それを元にした中国の古来の宣明暦や授時暦を後の江戸時代に参考にしていたときには、すでに近日点は冬至から6度ほどずれておりました。それこそ天地明察で暦師の渋川春海らが暦を大きく改良した点でした。そして現在では、さらにそこから6度ほど近日点が移動し小寒のあたりに近づいています。
では実際に、地球と太陽との間の遠近の差がどれくらいあるのかというと、距離ではおよそ500万kmとなり、±250万kmもの違いが生じています
これは光の速さで表してみると、地球に太陽の光線が届くには平均8分19秒に対して、遠日点では8分27秒、近日点では8分10秒と、遠近によって17秒の差が生じていることになります。なんか距離よって地球ー太陽の光の速度まで変化しているのだと思うと影響の大きさを感じますよね。
これは実際に天体観測としての太陽の大きさ(視直径)で比べると、遠日点(7月上旬 ) は0.522°角、近日点(1月上旬) は0.542°角となり、その差は0.02°角ほどですが、比率にすると大きさは約3%も違い、太陽光の量は7%も変化することになります。
この実測した太陽の大きさの比較を見てみると、かなり違いがあることがわかると思います。実際に太陽フレアを観測する際に、天文台では夏と冬では実像の太陽を覆い隠す盤のサイズを変えるなど観測の工夫をしているほど。
さて、現在7月上旬は地球のこの「遠日点」を地球が通過しているため、実際に太陽と地球との距離が遠ざかり、観測上の太陽の見た目の大きさも3%ほど小さく見えています。
広大な宇宙空間の中では、この遠近感の差などわずかであるように思いますが、太陽から地球が受けとっているエネルギー量は平均を100とすれば、近日点=103.4 、遠日点=96.7 の変化があります。
これは7%も光量が変化するという点で受熱量としては大きな違いがあり、
もし夏が遠日点ではなく近日点でだったら…、夏はもう少し暑く、冬はもう少し寒くなっています。これは地球において数万年単位で訪れている氷河期の周期(ミランコビッチサイクル)と関係していると言われています。
古来、宇宙は完璧で惑星の軌道は真円だと思われていましたが、地動説を確固たるものにしたケプラー以降、天体も自然物のごとく有機的に運動し「ぶれ」があるということが定説となりました。
フラフープやなわとびを回すとき、力のかけ具合が一定ではないように、運動には必ず「ゆらぎ」があります。地球の動きもわずかに「あそび」があることが自然の姿なのですね。(ケプラーの第1法則 楕円軌道の法則)
また、軌道が楕円であることによって公転の角速度は一定ではなく1年では「日の進み方」も変化します。(ケプラーの第2法則 面積速度一定の法則)
7月上旬の遠日点ではもっとも日の進みが遅く、反対に1月上旬がもっとも早くなります。実際に地球暦を見てみると、正月や年末年始が早く過ぎていくような気がしていたのも、実は気のせいではなかったことがわかります(笑)
一年で最の近日点。ここで一呼吸して現在の地球の位置を太陽系から確かめてみてはいかがでしょうか。
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