不倫にまつわるエトセトラ⑤

〜SIDE D〜

今日私は愛していた人を亡くした。

私が何をしたと言うのだろうか。全くもって身に覚えはなかった。
確かに最近の私は機嫌が良くなかった。もうすぐ父親になろうというのにその自覚が一向に見られない。夜は相変わらず飲み歩いているようだし昼間は外回りと言いながら何をしてるのかよくわからない。時々昼間に突然家に帰ってきたと思ったら私を性処理の道具として扱いまた仕事に行ってしまう。
若い頃は仕事と私に対して気遣いのできるいい男だった。あの頃の彼は一体どこへ行ってしまったのか。もうそこには愛などなかった。

別れよう。今日こそ絶対言う。
そう思って連絡を入れた矢先だった。
私の携帯が鳴る。急いでいるのか何度かかかってきたのでこちらからコールバックして対応する。一言二言会話を交わして電話を切る。なんともタイミングの悪い電話だ。
その矢先チャイムが鳴った。
宅急便だ。今はそれどころじゃない。
私は置き配をお願いした。

しばらくしてまたチャイムがなる。急いでインターホンのモニターを確認する。
本当にタイミングが悪い。愛がなくなったと感じた途端全ての事にイライラするようになった。今はそれどころじゃない。お願いだからこれ以上私をイライラさせないで欲しい。

「いや、なんか届いてるよ。重たいからもって…」
言い切らないうちに玄関前で大きな爆発音と共に愛していた人の姿は消えた。

何が起こったのか理解できずにいた。玄関前では焦げたような臭いがする。急いで勝手口から出ると玄関の前は黒焦げになっていた。家の壁が音を立てながら燃えている。先ほどまでいたはずの愛していた人の姿はそこにはなかった。

遠くから消防車のサイレンが聞こえる。
しばらくしてから呆然としていた私の携帯に警察から電話があった。

私の旦那が事故で亡くなったそうだ。

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