不倫にまつわるエトセトラ⑨

〜SIDE F〜
世界で1番好きで嫌いな生き物。それが女だ。いつからそうなってしまったのだろうか。家に帰ると母親が見たこともない男と見たこともない行為をしていた。翌日、その光景を思い出し学校で体調が悪くなり保健室で寝ていた時だった。
誰もいない午後の時間。誰かが入ってきて僕を相手に昨日見た行為をする。僕の卒業相手は一回り以上歳上の保健の先生だった。

学校では真面目な顔で授業をしていた優等生のあの娘。同級生に馴染めずいつも浮いている地味な女。どいつもこいつもセックスの時は動物のような声を上げ快楽に溺れる。そのギャップがすごく好きだった。

でもやる事をやった後の女は嫌いだ。僕のことをなんとも思っていなかった癖に突然自分のものだと言わんばかりに色々な事に口を出してくる。急に獣のように他のメスに対して威嚇を始める。こんな生き物とまともに付き合う気になれなかった。

女と行為をするまではそこまで難しい事じゃない。いくつかのパターンに当てはめて長期・短期での対応をする。昔習った数学の訳の分からない数式よりはるかに簡単だ。

社会人になると益々コミュニティは広がった。会社の中、取引先、インターネット、SNS。相手には困らないし面倒になれば切り捨てるのも簡単になった。

そして今日も1人。切り捨てないといけないメスの元に僕は向かっていた。元々は会社の後輩だった。人懐っこく良く僕に懐いていた。彼氏の相談をしてきた時だったろうか。よく覚えていないが気がつけばそういう関係になっていた。

…本当に女は面倒な生き物だ。

このメスが仕事終わりに「話がある」と言って僕に連絡をしてきた。
「生理が来てないの」
確かそんな話だった。彼氏との子供だろ?おめでとうとだけ言って店を出た。

身体の相性だけは良かったこのメスの連絡先だけ僕は確保していた。学生時代と違って社会人になると別のストレスが増えていく。昼間にどうしようも無くなった時は連絡を1本入れてこのメスの家で発散していた。このまま子供が産まれてからもストレス発散の道具として使おうと思っていたのに。

また「話がある」と向こうから連絡をしてきた。旦那にバレたとか子供の父親は誰なのかとかどうせ面倒な話だ。潮時と判断して僕は今日を最後に切り捨てることに決めた。ここ最近ストレス発散に行くとやたら機嫌が悪かった。別にこのメスにこだわる必要など全くない。そう思っていた。恨まれて刺されたりしないよう今日は優しくしよう。そんな事を思っていた。

家の近くのコンビニに着き携帯を鳴らす。これがいつものパターン。家の前に車を停めると面倒になるので迎えに来させていた。もうどうせ切るのだからと僕はこのメスの家に直接行くことにした。

インターホンを鳴らす。

向こうで面倒な生き物が声を荒げている。自分から呼び出しておいて今日は帰ってくれとか何様だ。そう思ったがこの手のタイプは切り方を間違えると後々面倒になりかねない。しっかりと切り捨てるためになんとか家に入ろうと試みる。目の前には宅急便の箱が置いてある。女1人でも持てるサイズだったがこれを口実にする事にした。

見た目のコンパクトさとは裏腹に中身はやたら重かった。箱をふってみる。おそらく水か何かだろう。中でぽちゃぽちゃと音が鳴っている。

「ほら、何か届いてるよ。重たいからもってあげ」

入る口実を言い切らないうちに鼓膜が破裂するほどの大きな音が流れて僕の世界はブラックアウトした。

…だから女は嫌いなのだ。

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