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特に意味のない文章010

いよいよ10回目である。長かったような短かったような。三日坊主の筆者がなんだかんだで続けてこれたのは、それなりに反応があったおかげだったりするような、しないような。
さて、今回の写真は……件のロッジ写真だ。初のアップロード画像になる。
閑話休題、ということで、前回の続きが気になる方も居るだろう。早速なので続きを書いていこうと思う。


前回
特に意味のない文章009
── 友人Dとの楽しいバーベキュー 前編 ──
https://note.com/kaibunsho_man/n/n19e6a8349302


── 友人Dとの楽しいバーベキュー 後編「ワシは生きねばならぬ」 ──

前回までの粗筋。
怪文書マン「やはりバーベキューか、いつ出発する、同行しよう!!」
友人D氏「おさけがのめてたのしい」
友人P氏「………………(早々につぶれて就寝」
「Dさんどこへ?!」
D「うぉォン!俺はまるで人間イノシシだ!(真夜中の藪の中に突進」

── ここから後編の本文 ──

── それはアッという間の出来事であった。時刻は夜中の1時(25時)を過ぎた頃、泥酔したD氏が突如錯乱。吸い込まれるように闇夜の山中、藪の中へ突進していった。筆者は、その背中をうっすら目の端に捉えたものの、黒いもやとなって、D氏は藪の中へ消えていった。

……?

え?

マ?

……マ?🤔

………………

あ"ぁ"ーーーーーーーーーーーーーッ??!!

一瞬、脳が理解を拒んだ。理解した瞬間、酔いは吹っ飛び、一気に冷静になり自分の状況を考える。手に持っているのは頼りない携帯電話の灯りのみ。この装備で闇夜の山中へ捜索しに行くのはヤバい。確実にミイラ取りがなんとやらだ。何を考えているんだ、D氏は、いや何も考えていない、あの状態なのだから。
余りの出来事に泡を食ったが、全力疾走でロッジに戻る。そうだ!P氏だ、P氏がいる。ロッジには恐らく、懐中電灯ぐらいはあるだろう。装備と人が必要だ!
かつて無いほどの速さで坂を駆け上がり、ロッジに戻り、寝ているP氏をたたき起こす。

「た、大変だPさん!!Dさんが、Dさんが!藪の中に走っていった!!

寝ていたP「……なにしてんの」

ご尤もだ。
私だって同じ気持ちだ。
なにしてんのD氏。

「す、すまない、でも、D氏が闇の中に走って行ってしまい、一人で追いかけるにも、自分も行方不明になる恐れがあった」
P「なるほど、な?……仕方ない、行こう」

幸いにもロッジには懐中電灯がひとつあった。筆者は携帯電話の灯りを、P氏が懐中電灯を用いて、D氏の捜索を開始する。雨の降る中、二人はとりあえず坂を下り、行方不明ポイント近くまで戻る。

「えっと、ここだ、この先の藪に向かって走っていったんだ」
P「マジで、何してんのあの人」
「そう、この辺で、えっと、帰るよと伝えて、踵を返して3歩ほど歩いたら、もう、藪の中に……え?」

その時筆者は妙なものを目にする。
真っ暗な地面、白い何かが道路の脇に生えているように見えた。

「Pさん、そこ、なんか生えてないっすか」
P「ん?ああ、なんか白いのあるな」

それは、よく見ると人の手の様に見えた。

「な、なんだぁ……?マネキン?マネキンかぁ~?こんなところに……」
P「さあ?行きはこのカーブのこの位置は死角だったからなあ……」

次の瞬間だった。

地面に落ちた手が

ひとりでに動き出したのだ

怪「ひぁああぁぁーーーーーーーーーーーッ???!!(悲鳴」
P「??!!」

思わず悲鳴を上げて飛び上がる筆者。
いや、そんなことはどうでもいい、間違いなく動いている。手がひとりでに動き出している。冗談じゃない。幽霊か?!メルヘンやファンタジーじゃあないんですから!!いるわけが無い!!

怪「あ??」

怪「…………」

怪「Dさん、なにじめんで寝てるの……」

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思わず苦笑するP氏。
あっけにとられる筆者。
地面で寝るD氏。
AWAJI MELT DOWN

無事だ、どういうわけか分からないが、D氏は無事だった。慌てて脈と呼吸を確認したが、生きていた。なんだこの人騒がせな男は……
どうやら、上下真っ黒な服を着ていたせいで、腕と脚しか見えず、手だけが勝手に動いているように見えていたようだ。本当にビックリした、マドハンドの亡霊か何かかと思った。
それにしても妙だ、雨が降っているとは言え、この男、D氏は異様なほどにずぶ濡れになっている。あの短時間に一体何があったというのだ。アスファルトと友達になっているD氏を、P氏と協力し、両脇を抱きかかえて起こす。そのまま、なんとかかんとかしロッジを目指し始めていた。筆者はD氏を心配し、話しかけ、意識レベルを確認していた。

「Dさん、何があったんだ、何が……?あの先に?」
D「……ならぬ……ねば……なら……」
「……?な、なに?」
D「……ねば……ならん……のじゃ……!!」
「んん?……なに、どうした?」

D「 生 き ね ば な ら ぬ ! ! ワ シ は ! 生 き ね ば な ら ん の じ ゃ ! ! 」

突如そう叫ぶと

D氏は

D氏は……

陸上選手顔負けの姿勢の良さで
100m12秒台ぐらいの速度で走り出した!!

怪「なんだあいつ、めっちゃはえぇ!?」
P「…………(力なく項垂れる」

慌てて後を追いかける筆者、こちらも全力疾走だ。ふと思い出すと、D氏と深酒すると、筆者は何時も全力疾走させられている気がする。ふふ、あれは彼と初めて会った時、楽しくお酒を……いや、今は思い出に気持ちを逃避している場合ではない。D氏がまたしても行方不明となろうとしている。これは何としても止めなくてはならない。
D氏は我々が宿泊しているロッジへの道、そのひとつ手前を曲がり、他の宿泊者がいる施設群に突撃する。うぉおい?!このままではウルトラスーパーグレートデリシャスワンダフルはた迷惑集団になってしまう!D氏止まれ!止まってくれ!頼む!たろむ!とまっれ!お、おう、忘れていた、筆者こと怪文書マン、即ち私も、結構もう飲んでいて、ああ、酒が、酒がすごい回る、目も回……る……ヤバいぞ……

あ…………

D氏…………

ま た 倒 れ て る 。

間一髪だった。筆者が倒れるか、D氏が倒れるか、結果はD氏のエネルギー切れだった。助かった、いや、行き止まりで、これ以上向かう先が無い為、観念して燃え尽きたようにも見える。何はともあれ燃え尽きてくれている。
後からゆっくりP氏が歩いて合流、再び脇を抱え運ぶことにする。

P「……もう……勘弁、してくれ」

ご尤もだ。
私だって同じ気持ちだ。
もう疲れたよ。
なんだかとっても眠いんだ。

「あと少しだ、あと少しでロッジだ」

先ほど、D氏が曲がった道が見えてくる。ほんのり坂になっており、無意識の成人男性を運ぶのに苦労する羽目になる。すごく重い、二人で抱えても、ものすごく重い。筆者は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できない重さだ……

「お、重い、無意識の人ってこんなに重いんだな」
P「いったん、休まないか、一気には無理そうだ」
「それは、言えてる……」

D「……ねば……ならん……のじゃ……!!」

怪&P「ッ??!!」

──それは凄い早さであった。
我々、霊長類ヒト科は二足歩行を習得してから数十万年、多くの生き物を超えるアドバンテージを手に入れ続けた。現代人になれば猶更だ。

D氏は紛れもなく現代人だ。

それなのに

一体なんだい?

その走行スタイルは

暴走中のエヴァンゲリオンめいた

四足歩行のスタイルで

彼は、D氏は、我々の制止を振り払い

走り出したのであった

「 生 き ね ば な ら ぬ 」と叫びながら。

「んんんんあぁぁぁあぁああああああああああ、なんだアレ猛烈に早いwww追いつかねえwww嘘だろwww(全力疾走3度目」

D氏はその四つん這いで50mほど走行
2足歩行の筆者をあざ笑うように振り切るものの
突如として本当に燃え尽きたように倒れ、遂にその場で沈黙したのであった。

チーン……

お、恐ろしい相手だった。


ロッジに無事……?うん、まあ、無事にたどり着いた我々は、D氏を寝かしつけたものの、あることに気が付く。こいつ、履いていた備え付けのクロックスを紛失している。P氏は疲れた、もう寝ると言う。即ち、失われたクロックスを探す人物は……そう!

筆者、つまり私しかいないことになる。

マジかよ、またあの雨の中行くのか……なんてこった……
しかし、歩いた箇所、走った個所をくまなく探すが見つからない。というか、D氏は片方何も履かずに走り回っていたのか。本当に奴は現代人か?それにしても、本当に無い。どこにもない。真っ暗な中、いったい私は何をしているのだろうか。どうしてこんなことになったのか……30分ほど探して回るが、見つけることは叶わなかった。
明日、ロッジの管理者にどのように謝るか……そういったことを考えながらロッジに再び戻ってきた。

するとどうだろうか、ロッジの中から水音がする。

今度はなんだ、いったい何が起きている。

まさか、風呂で溺れて倒れているとか無いだろうな……

恐る恐る、各部屋を確認していく。

やはり風呂場だ、風呂場で妙な水音がしている。

ゆっくりドアを開ける。

すると……


D「おや、怪文書さん、どうかしましたか?」


ゆっくり暖かいシャワーを浴びているD氏を目の当たりにした。

おぉ、おぉぉ……遂に膝から崩れ落ちる。

どうか、どうかしました、じゃあ~ない。

おま、おまえ、おまおま……おまえ、おま……

こっちは、雨の中、君が、D君、君がさぁ~落としたクロックスを……

うん、うん……


流石の筆者も、遂に力尽きたのであった。


一応、寝てる間にD氏が嘔吐、窒息しないか見守りながら、午前3時、ベッドで、一通り簡単に片づけをしてから寝たのであった。


とても、とても恐ろしく長い夜であった。


── 翌日 ──

余りにも頭が重い、ていうか眠い。つらい。そろそろチェックアウトの時間らしいが、かなりつらい。全身の節々が痛い。ふと周りを見渡すとP氏は先に帰っている様子だった。D氏は何故かロッジのオーナーと歓談している。

昨日、全身がずぶ濡れになったため、適当に干したズボンを手に取る。ポケットから小さなムカデが出てくる。最高に目が覚めるサプライズも付いてきたおかげで目はパッチリ冴えた。

D「おや、怪文書マンさん、おはようございます」
「……お、おはよう、うむ、昨日の事は覚えてるか?」
D「全く覚えていないですが、P氏から粗方聞きましたわ、いやあ、申し訳ない」
「ほんとうだよ、あのまま気が付かなかったら、夏とはいえ、肺炎起こして死にかねんぞ……」

此処でふと気になった事を思い出す。

「そういえばDさんや、救助に向かった時、異様なほど濡れていたけど、あれは一体……?」
D「いやあ、それが、藪の中に入っていったじゃあないですか」
「あ、ああ、そうだね」
D「あの後、ため池に落ちまして」
「?!」
D「真っ暗闇でしたので、右も左も分からぬまま、なんとか岸にたどり着き」
「お、おう」
D「元の道まで何とか戻って来て、力尽きて倒れていたのですよ」
「それで全身が濡れていたのか……」

マドハンドの亡霊事件は、そういった全貌だったのか。なるほど、いや、まったくもって意味不明だが、なるほど、そういう事か……何してんだ、この人、本当に……

「それにしても、吸い込まれるように入っていったな」
D「先ほどロッジのオーナーに聞いた話ですが、その池」

D「地獄池っていうらしいですね」

「……よく生きて、帰ってこれたな」
D「ええ、必死でしたので」
「……それで、あれかな、生きねばと、ずっとうわごとの様に」
D「そうかもしれませんなぁ~……」

そんな会話を終え、いよいよD氏とお別れとなる。
中々、エキサイティング……いや、エクストリームバーベキューになってしまったが、良い思い出に……うーん、良い……?確かに一生忘れることは無さそうだが、とりあえず良い思い出にしておこう。
なお、D氏は特にケガも病気もなく元気にしている。そいつは良かった。
一方で筆者はブユに襲われ、虫に刺され、足の指という指がとびひみたいになり、今もなお痒みと痛みに襲われる後遺症を負った。なんであいつ無事なんだよ。
そして、最後にD氏は晴れやかな顔でこういった。

D「こういったバーベキュー、年に1度ぐらいしたいものですなあ」

怪「いや、2度目は勘弁してくれ」


── 友人Dとの楽しいバーベキュー ──
おしまい

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