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「事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方」

 敬愛する元共同通信記者、澤康臣さんの新刊「事実はどこにあるのか 民主主義を運営するためのニュースの見方」(幻冬舎新書)を読み終えました。
 SNSが発達し、デジタル情報の総量はこの20年で1万6000倍になったと言います。新聞の購読者は減少の一途を辿り、若い世代のテレビ離れも進む一方。もうニュースはスマホで見る時代です。しかし、SNSへの依存が深まる中で、ニュースから「真実」を見抜くことができるのでしょうか。
 社会情勢が変わっても、民主主義とともに歩むジャーナリズムの論理と倫理の根本は変わらないものだと思います。しかし、人々がニュースを受け取る媒体が変化し、「歴史の第一稿」たるニュースが日々伝えられていく中で、それに合わせて新たな課題は生じてくものるでしょう。本書はロシアのウクライナ侵攻や安倍元首相銃撃事件などの最近のニュースの報じられ方も踏まえた最新のジャーナリズム論です。
 圧巻なのは、取り上げた古今東西の事例が豊富で、それが極めて体系的に整理されているという点。それもそのはずで、澤さんは現在、専修大学文学部ジャーナリズム学科の教授です。記者時代には世界の極秘情報を暴いた「パナマ文書」報道にも携わった第一線の記者としての経験を踏まえているだけに説得力が違います。そして本書で取り上げたニュースは、すべて報道した記者や当事者の実名を記しています。この点にも澤さんの報道人としての信念を感じました。
 これからジャーナリストを目指す方はもちろん、メディア不信に陥っている方々にも是非本書をお読みいただきたい。そして、現在報道の現場で活躍されている記者の皆さんにもお勧めします。伝えるべきか、自粛すべきか。そういった葛藤を抱えるのは報道に携わる者の宿命だと思いますが、本書はある時には背中を押し、ある時には正当な報道をするための理論武装となるでしょう。
 私にとっても座右の書となりました。

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