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サバイバル登山家、服部文祥さんの「いのちのうちがわ B面」

 サバイバル登山家の服部文祥さんから新刊「いのちのうちがわ B面」(笠倉出版社)を送って頂いた。写真家・石川竜一氏の写真作品とコラボレーションした写真詩集。案内文には手書きで「詩人デビューしました」と書き添えられてい。

 最小限の装備で山に入り、食料は獲物を撃ち殺すことで現地調達する登山家の服部さんが詩人に―。ただ、突飛だという印象はまったく感じなかった。なぜなら服部さんは松本清張賞候補にも挙がった「息子と狩猟に」(新潮社)という問題作で、既に小説家デビューをしているから。類まれな行動派であるだけでなく、文学の世界の人物でもあるのだ。

 写真集を開けば、石川竜一氏による解体された獲物の鮮明な写真に度肝を抜かれ、そこに添えられた服部さんが紡ぎ出した言葉が胸に刺さる。すんなりは見られない。すんなりは読み進められない。そんな一冊だ。

 この唯一無二とも言える世界観が、すべての人に共感されるとは思えない。反発を覚える人だって少なくないはずだ。服部さんはそれを百も承知の上で、言わば挑発的に、自身が見て、体験して、感じた「真実」を突きつけてくる。これは「息子と狩猟に」の世界観そのものだ。

 真似はできないし、しようとも思わない。でも、自分には見えていない世界を突きつけられて、そこで何かを感じ取ることが大切なのではないだろうか。

 この一冊とは長い時間をかけて向かい合っていきたい。

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