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「ホープレス in ドナウ川」

 佐藤ジョアナ玲子さんの新刊「ホープレス in ドナウ川」(報知新聞社)を読みました。斉藤茂太賞を受賞したデビュー作「ホームレス女子大生川を下る」に続く川下り体験記第2弾です。

 小説でもそうだと思いますが、特に事実を題材とするノンフィクションは1作目が評価された後の2作目というのは難しいものです。1作目のインパクトがあまりにも大きかったので、今度はどうかな…と思いましたが、見事に1冊目の水準を維持した読み物になっています。

 ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー、クロアチア、セルビア、ブルガリア、ルーマニア…。こういった国々を旅した人は少なくないと思いますが、川下りという視点からは、まったく見慣れない、聞き慣れない風景が見えてくるものです。わずかな所持金でも、奔放な旅を楽しめる著者をうらやましいと思うと同時に、行く先々でいろんな人に手をさしのべてもらえるというのも、一つの才能なのだろうな、とも思いました。

 「リベルランド自由共和国」という存在は全く知らなかったし、戦時下に置かれてしまったウクライナの現状も興味深いものでした。

 何よりも嬉しかったのは、第1作目で表現した自由奔放な生き方を貫いているということ。でも、つい、このままでこの子、大丈夫なのかな、などと思ってもしまうのですが、そんな心配は無用でしょう。

 地球上のどこであろうとたくましく生き、そこでしか見いだせない喜びを見つけ出す力の持ち主だと思います。

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