「星の器アレンジ移植」騒動でSEGAが踏み抜いた”同人と企業の一線”について

事の発端は9/18のチュウニズム(以下チュウニ)の発表。東方オンリー超絶大規模イベントとして有名な例大祭の前に東方Project関係のアレンジ曲を収録するという告知からでした。

この例大祭。2013年にKONAMIがSOUND VOLTEX(以下ボルテ)が企業ブースの一環として出展して以降、他会社のアーケード音ゲーも出展もしてるんですよね。それこそ太鼓の達人とかグルーヴコースターとかも。

SEGAもこの例に漏れず此処のところは毎年参加し続けてますし、例大祭の時に東方アレンジ楽曲の収録やイベント発表も(確か)毎回行っています。

なんで、これだけならチュウニをじみーーに稼働初期からプレイしている自分としても「お、そろそろ。例大祭か。今回は先だしもあるんだな~~」だけで済んだんですよ。これだけなら……。

で、実際に出てきたのが此方。


………………………………いや、何処に問題があるの!?と思った方。ぶっちゃけ、左の3曲に関しては何ら問題ありません。寧ろ、今まで入ってなかったことがオドロキの知名度の曲ですし。

問題は一番右の「星の器 ~STAR OF ANDROMEDA」ですね。

「え、何が問題なの?旧作魔理沙だから?」と思うかもしれな………というかそれが普通だと思いますが、百聞は一見に如かず。この星の器アレンジの音源をご用意したのでお聞きください。

そう、この楽曲。「BMS楽曲」の1つなのです。それも何らかの媒体で発表されたものをBMSにしたのではなく、「初めからBMS楽曲」として作られた作品。BMS界隈での知名度としても、発狂BMS★1の代表格として長く愛されていてかなり群を抜いています。

……これだけなら(beatmaniaのクローンゲームであるBMSからの移植云々はさておきとして、)問題ないんです。東方アレンジ曲であることには違いありません。

というわけで、次に此方の「KONAMI」の「beatmania ⅡDX(以下、弐寺)」に収録されている曲もお聞きください。曲名?そうですね。「ANDROMEDA」です。


…………………はい。先ほどの星の器のアレンジ曲。こちらのANDROMEDAの曲のアレンジが思いっきり詰め込まれてます。弐寺の方のANDROMEDAのジャンル名が「PSYCHEDELIC GOA TRANCE」で星の器のアレンジのジャンル名が「GOA TRANCE」で、副題に思いっきりANDROMEDAと書いてあったりと、思いっきり「弐寺のANDROMEDAのアレンジ曲」なんですよ。寧ろ、こっちの要素が強すぎて星の器要素が僅かなレベルで。

当然ですが、KONAMI公式のリミックスやアレンジではなくて、同人の曲です。


なので、「弐寺の同人クローンゲームであるBMS」に存在する「弐寺に収録されている曲のアレンジ曲」を「SEGAのアーケード音ゲー」へ移植したってのが騒動のポイントです。


え、KONAMIに対してそりゃ当然許可を取っているだろう?って?いやぁ、僕も最初は許可かなんか取りに行った可能性もあるんじゃないかなぁと思ったんですよ。思った……んですよ……。

所で、このチュウニですが、KONAMIが持っていた(俗に言う)BEMANI特許時代が有効であった時に作られたものです。なので、KONAMIも公式に協力してるんですよ。タイトル画面を待っていると、ALL.Netの隣の目立つ位置にKONAMIのクレジットが乗っているレベルで。

そして、その縁の関係かBEMANI楽曲も幾つか収録されています。有名どこだと稼働開始時にFLOWERが入ったことですね。此方が当時の告知です。

はい、このスライドの左下に注目してください。KONAMIやBEMANIの当時のクレジットが確りと著作権表記されていますね。正式にKONAMIから許可を得た上で収録された証です。

で、改めて今回の星の器収録のスライドの左下を見て下さい。いやー、KONAMIに許可とってるなら当然左下にKONAMIのクレジット表記が……

……SEGAと上海アリス幻樂団しかありませんね。

いやいやいやいや。別に既存の公式音ゲーの曲をオマージュしまくった東方アレンジ曲なら一杯あるじゃん。ほら、紅魔郷数曲をミックスしたアレンジ曲として有名な「taboo tears you up」なんて思いっきり弐寺をオマージュしまくっ………

後に弐寺を作っているKONAMIの別機種に公式で収録されたんですよね……。

この時も音ゲー界隈で話題にも上がりましたけれど、「オマージュ元であるKONAMIが許可するのなら……」で流されましたね。

後に、この曲もチュウニに入りましたけどね。

ま、まぁ、こっちは汎用的な声ネタが中心なのでギリギリパロディの範囲で収ま……収まる、かな……。


ただ、今回の星の器アレンジは

・曲の大部分が別の会社の音ゲーオリジナル曲のアレンジ

・原曲は「SEGAがチュウニを作成する時に協力した企業」であるKONAMIの社員(Sotaさん)が作ったもの。(ついでに言うと、原曲は根強い人気があり続ける曲)

・KONAMIの音ゲー機種のクローンゲームであるBMS用に作られた曲

・をKONAMIに無認可で入れた(とほぼ確信していい)

……と問題だらけなんですよね。


ぶっちゃけ訴えようと思ったらKONAMI側が訴えられる要素はありまくると思えるレベル。ですけども、KONAMI側に非常に厄介な暗黙の了解があるんですね、これが。

版権ヤ……としても名高い”あの”KONAMIが「限りなく黒に近いグレー」であるBMSを長年放置し続けたというのが問題になるんです。過去に自分が書いた文章からの引用ですけれども、KONAMIとBMSの関係は長年

>「BMSに対して目立った干渉はしない。その代わり、BMSを経由して育ったクリエイターはどんどん起用していく」という方針だったのでしょう。

という、スタンスです。

今でこそKONAMIの音ゲーでは同人音楽を中心にするボルテやピアノメインのノスタルジアに、幾つかのBMS曲がアレンジorそのまま収録されていますが、このスタンスは変わってませんね。

現に収録されたBMSの曲以上に「BMSを経由したクリエイターによるオリジナル曲・オリジナルBGAの作成・配信」は行われ続けてます。歴史の長い弐寺とかポップンとかDDRとかにも。

KONAMI側はクローンゲームであるBMSをわざと見逃す代わりに、頭角を現してきたクリエイターを積極的に登用しています……が、かといってクローンゲームを公式で容認することなんて当然できない。

だから、今回の「星の器アレンジ曲」という名目での「弐寺アレンジ同人曲のSEGAへの移植」が行われたとしても、KONAMI側は無視せざるを得ないでしょうね。KONAMIが公式に介入したらそれこそコレまで暗黙の了解で、作り上げてきたBMS界隈が一気に潰れてしまう。……ってことは、何れ公式に迎えたいクリエイターが消えてしまう可能性もあり得ますからね。


そう。どうしたとしても、SEGAの入れたもの勝ちで終わってしまうんです。


なんで、この問題の何が一番個人的に気にくわねぇなぁってのは、昨今の同人界隈でよくいわれる「お目こぼし貰ってた二次創作のマナー」「大企業が公式に踏み抜いていった」。これに尽きるんです。



それこそ、昨今では二次創作活動による同人界隈から羽ばたいてプロ活動をするクリエイターは増えてきている。逆にプロの方から同人活動を招きいれることも増えてきた。

その際に如何にして同人活動と企業での活動との壁を”意識”していくのか。

そこに関して今一度見直すべきなのだろうと今回の騒動を見て改めて思いました。……元をたどれば、どちらも良い曲なのにね。

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