唯一の女性隊長『ウルトラマンティガ』高樹澪の存在意義(2)彼女の耐えられない存在の軽さ/『ウルトラマンA』覚え書き(32)

1996年9月に放映開始した『ウルトラマンティガ』は、それまでのウルトラシリーズの設定を、すべてリセットする形で始まった。

初代『ウルトラマン』から『ウルトラマン80』まで共通しているのは、地球は常に怪獣の出現や宇宙人の侵略に悩まされ、それに対処する組織として地球防衛軍が存在し、その極東支部、あるいは日本支部として、主人公が所属する少数精鋭の部隊を中心に、ドラマが展開される。部隊の名称は、初期は科学特捜隊(ウルトラマン)、ウルトラ警備隊(ウルトラセブン)と日本語表記だったが、次第にMAT(Monster Attack Team)、TAC(Terrible-monster Attacking Crew)と、アルファベット3文字の略称になった。彼らは、最初から怪獣や宇宙人と戦う戦闘部隊だった。

『ウルトラマンティガ』における部隊の名称はGUTS(Global Unlimited Task Squad)。直訳すれば「世界規模で無制限に仕事をするチーム」となる。その上部組織は地球平和連合TPC(Terrestrial Peaceable Consortium)。GUTSは、その極東本部に属する特別捜査チームであり、その隊長が高樹澪扮するイルマ・メグミだ。

最初にぼくを混乱させたのは、このGUTSが戦闘部隊ではないという初期設定だ。

物語は21世紀初頭(2007-2010年)の世界。冒頭、「21世紀初頭、憎しみや争いごとは減り、自然は美しさを取り戻そうとしていた。この星に住む者すべての願い、平和が、ようやくかなえられようとしていた」とナレーションが入る。続いて、基地から発信するGUTSの航空機ガッツウィング。ガッツウィングがモンゴル平原に達した時、砂漠から怪獣が出現する。ガッツウィングに搭乗していたGUTS隊員のダイゴ(長野博)とヤナセ(吉本多香美)は、「なに、あれ!」「すげえ!」と、地球防衛軍の戦闘員とは思えない、「シロートか!」って台詞をはく。なぜか攻撃をしない。

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