大人を信じるな!/『ウルトラマンA』覚え書き(14)

前回紹介した十三話の脚本は田口成光、今回紹介する十四話は市川森一と、前後編にもかかわらず、脚本家が変わっている。本来、一続きの話なのに、どういう役割分担なのかは分からない。だが、あくまでも印象だけれど、第十三話で描こうとしていた兄弟愛(ウルトラ兄弟と、超獣に兄を殺された弟)が、第十四話ではあまり顧みられず、第十三話にはなかった別の要素が大きな比重を占めている事から、文字どおり前半は田口成光(切通理作氏が『怪獣少年の復讐』で指摘するとおり「子供目線」の話が多い)が、後半は市川森一が書いたものと考えても、いいかもしれない。

前回短かったぶん、今回はちょっと長いです。

『ウルトラマンA』第14話/銀河に散った5つの星

脚本=市川森一/監督=吉野安雄

さて、第十四話で付け加えられた、前編であるはずの第十三話になかった要素の一つは、初登場の高倉司令官だ。

ウルトラシリーズに登場する対怪獣攻撃組織(科学特捜隊、ウルトラ警備隊、МAT、そしてTAC)は、国際的地球防衛組織の日本支部における一タスクフォースといった位置づけだ。彼らが実働部隊だとすれば、その上部には当然、幕僚的存在がある。いわば地球防衛組織の日本における大ボスだが、初代『ウルトラマン』以後、前作の『ウルトラセブン』まで、その役を演じてきたのは、藤田進だ。

藤田進といえば、黒澤明のデビュー作『姿三四郎』(1943年)で主役を演じた事で有名だが、戦時中は軍服の似合う俳優として戦意高揚映画で、戦後は東宝の戦争映画や特撮映画で、数多く軍人役に扮してきた俳優だ。初代『ウルトラマン』では防衛幕僚長として一回出るだけだが、『ウルトラセブン』ではヤマオカ長官としてセミレギュラー的に登場、タケナカ参謀(佐原健二)、マナベ参謀(宮川洋一)と優秀な幕僚を従え、頼れる高級軍人ぶりを重厚な演技で見せていた。

つづく『帰ってきたウルトラマン』でも、岸田地球防衛庁長官として三話出演するが、こちらは打って変わって憎まれ役だった。МATには、この岸田長官の甥である岸田隊員(西田健)がいて、しょっちゅう主役の郷秀樹(団次郎)と対立していたし、岸田長官自身、出てくる度に世論を気にして「МATは何をやっとるんだ!」と余計なプレッシャーをかける役回りだった。「なぁに、またウルトラマンが出て来て怪獣を倒してくれるさ」などと、地球を防衛する責任者にあるまじき台詞を吐いたりと、小学生のぼくにも憎たらしく見えた。後に再放送で『ウルトラセブン』の立派すぎるヤマオカ長官を見て、あまりの違いに驚いた記憶がある。

で、『ウルトラマンA』に登場する「長官」は、TAC南太平洋国際本部司令官という肩書を持つ、高倉司令官。演じるは山形勲。東映時代劇でラスボス的悪役を数多く演じた人だが、実はロンドン生まれで、若い頃は新劇の舞台で東大出の山村聡などとともに経験を積んだインテリである。現代劇では『不毛地帯』(1976年、山本薩夫監督)の商事会社社長など政治家や高級官僚、会社重役などいわゆる「偉い人」役が多かった。一方、藤田まこと主演で有名な『剣客商売』の秋山小兵衛も、最初のテレビドラマ化の際は山形がキャスティングされ、豪放かつ洒脱な老武士を見事に演じるなど、悪役にとどまらない懐深い芝居を見せる名優だった(わが家では、その風貌から「日本のアンソニー・クイン」と呼んでいる)。

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