兄弟たちの三角関係/『ウルトラマンA』覚え書き(10)

これも視聴率回復のテコ入れなのだろうか、ウルトラシリーズの前作『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹(団次郎)が特別出演。

『ウルトラマンA』第10話/決戦!エース対郷秀樹

脚本=田口成光/監督=山際栄三

『帰ってきたウルトラマン』は、ぼくが小学校に入学した1972年の4月に放映が開始され、リアルタイムで見た初めてのウルトラシリーズだ。当時、30歳を超えたばかりの母が、「今度の主役はだん・じろう、なのよねえ」と妙にときめいた表情だったのを覚えている。187センチの長身、英国系アメリカ人の父を持つ、彫りの深い美男の団次郎はすでに、ドラマやCМ出演で顔を知られていたらしい。ちなみに、団次郎が出演していた資生堂のCМで、弟分のような形でデビューしたのが草刈正雄だった。

特撮ドラマが成功するカギは、実は子供だけじゃなく、お母さんだと聞いた事がある。例えば『仮面ライダー』は、昭和の子供であったぼくらには、藤岡弘ら男くさいライダーたちが時代劇のように最後は砂利場で戦うアクションものだったが(作り手の多くも、東映で時代劇を作っていたスタッフだった)、平成になると、日曜の朝、つかれたお父さんが寝てる間に、お母さんが子供たちと一緒に見るドラマになった。オダギリジョー、水嶋ヒロ、佐藤健、瀬戸康史、菅田将暉、福士蒼汰、吉沢亮といった「女子受けする」(というか、私の妻や娘が夢中になる)イケメン俳優たちを輩出したが、その前例が、『帰ってきたウルトラマン』の団次郎だった。

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