おしまいの覚書(病院)

 コルセットの治療が一旦終わった。成長期が終わると共に中程度の側弯症の固定が終了、再びの経過観察である。
 これで進まなければ本当に(装具治療が)終了だし、進んだらネクストステージだ。先生はだからコルセット捨てないでねと言ったが、捨てるにしてもこれはどう廃棄するんだろう。
 病院に言われるままの治療をする上で禁止事項はない。例えば重いものを持つな、とか姿勢に気を付けてとかそういうことは一切なし。一応、荷物が片方に偏らないようにしてみたり。つまりほとんど気にしていなかった。気にする人はこのターンでヨガとか整体に行くのかもしれぬ。
 ここから進まない人もいるし進む人もいるということで、診断から1年あまり経って、コルセットのステージに我々は上がったのである。
 整形外科医というのは、どの人も思春期の側弯症についてやってはいけないことというのは全くないと言う。他に、治す方法は手術だけ、成長期にそれ以上曲がらないよう固定するだけが予防であると。日本全国共通認識なのかもしれない。
 医療というのは、患者ができるだけ健康な人と同じ水準で生活できるようにする(戻す)のが仕事で、状態が健康な人から乖離しない限り生活に制限をかけることを良しとしない思想があるのではないか。
 だもんで、固定の必要がない軽度なら何でもやっていいですよと野に放たれ、中程度となれば装具を作って着けて何でもやっていいですよとやはり野に放たれる。
 装具を着けようと着けなかろうと、やることは経過観察であった。これが日本に於ける若年性脊柱側弯症に標準治療とされている。しかし世の中にはこの治療法に疑問を持つ人びとがいる。何が標準かなんて時代で変わっていくので今Mがやってる治療は早晩古くなるのかもだし、もう古いのかもしれない。
 Mはこの1年、コルセットを着けてそれで進行もなく、骨の成長はほぼ終わったということで、標準治療上等である。
 先生は、Mの前にみた女子ももう今日でコルセットおしまいにしたのだと言った。お母さんは不安だからもう少し着けていたいと言ってたけどね。
 さっき待ち合いで見かけた、コルセットをエコバッグに入れて帰っていったKたちと同じような親子がいた。Mが袋にも入れずにイスにコルセットを置いていたら二度見してきたが、気持ちは分かる。なんで着けて帰らないんだろうと思ったがそういうことか。
 我々も着けずに帰るパターンだった。
 もう少し着けていたいの気持ちは分かる。が、着けるのはKじゃないし、今度は着けずに進行するかしないかを見るターンで、それはそれで重要な期間だ。進行するタイプのそれではないという所見も要るから、素人考えで着けてはダメだろう。