読書の秋II

 秋でなくても本は読むけど、秋にしか本を読まない傾向のあるMと図書館へ行き、柚木麻子の本を借りてきたが途中で読むのを止めた。この前に借りた本が面白かったから棚にあった別の作品を借りてきたがどうも今ひとつつまらない。Kは面白いと思った作家の作品を片っ端から読むが、大体3つか4つ目で面白くないなと思って止めてしまう。今回もそうであった。
 ところでKは恩田陸の本を集めている。先日出たばかりの「なんとかしなくちゃ」もゲットした。発売日に新刊を買ったからには新刊のうちに読まねばならないという気持ちと新しい本を開くのがもったいないという気持ちが鬩ぎ合い、先に図書館で借りた本を読まなくてはと思い、そちらから読んだらガッカリするほど面白くなく、やはり新刊のうちにと読むことにした。
 恩田陸ももちろん、全作品が全部面白いわけではないし好みではない本もあるがなんだか好きで集めている。「なんとかしなくちゃ」はKの好みで面白いほうの作品であった。
 柚木麻子と恩田陸を立て続けに読み、なぜ(お金を出して買うほど)恩田陸が好きなのか、分かったことがある。前者はセンスと勢いだけで知識が浅い。「BUTTER」が面白かったのは取材を丹念にしているからか、背景や物事に対して深く丁寧な描写がなされていた。「王妃の帰還」は登場人物を丁寧に描いている。女子中学生が生き生きとしてとても良かった。しかし「わたしにふさわしいホテル」は新人作家が主人公で恐らく作者自身の経験(だけ)を元に書かれていると思われ、登場人物の考えや行動原理がただ、気に入らない者をギャフンと言わせたいだけの物語となっていて、つまらなくて読めなかった。
 もう1冊借りてあるけど読めるかな・・・。
 恩田陸にも面白くない本はあるが、基本的に登場人物の背景がきっちり描かれていて、なぜそう思うのかなぜそうするのかが理解できるのでつまらなくても最後まで読める。小説なので現実にはあり得ないだろうということが当然出てくるが、そういう背景があれば、そういうこともあるかもしれないと納得するのである。
 本の中に世界のすべてが入っているような、物語を所有できるような書籍ならお金を出して買いたいと思う。人の思いとか生き方とか、そういうのは案外不要で、登場人物が生きている世界が物語なのかもしれない。物語の舞台が現代の日本であっても、読み手にその世界の構築を投げてこない物語がいい。
 自分の好きな本の傾向があったなと思った話。

追記。
 柚木麻子のもう一冊借りてあった本は無事読了して図書館に返却した。「デートクレンジング」は、女性が人生のステージが変わることででこれまでの友だち付き合いや仕事がそのまま続けられなくなるのをよしとするかそうではないのかみたいな話だった。MがK-POPアイドルに夢中なので、イメージしやすかったというのはある。Kもこの年まで生きてきて友だちや付き合いが変わったり、仕事や住むところが変わったけど、変わってしまうのはしょうがないしあらがうこともないんじゃないの、と思ってきた。まあ女性だけじゃないしねそういうのは。
 暇つぶしに2時間ドラマを見ました、みたいな読了感で、柚木麻子の読書は終わった。図書館にはほかの本がなかったからだ。
 ところで恩田陸「なんとかしなくちゃ」は面白く読み終わった。これ本当に朝ドラにならないかしら。やはり本を買うなら物語を所有すると思って買いたい。