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🎩BLワールド備忘録🌕️『凍る月』シリーズ🦖夜光花


夜光花著
  高橋悠イラスト


「お前は餌だ、契約しなければ二十歳で死ぬ」
突然、梁井にそう言われて、光陽は目を見開いたまま言葉を失った。
生まれつき、どんな傷でもあっという間に治癒してしまうと言う特異体質の光陽は、幼い頃から母と祖父母に匿うように育てられた。他人と接することを阻まれ外出もままならない。なぜ、自分だけがこんな体なのか、どうして友だちをつくってはいけないのか?テレビで見る同年代の子供たちが皆で遊んでいる姿を羨ましくて仕方なかった。疑問をぶつける光陽に祖父は「二十歳になったら自由にしていい。だからそれまではがまんしろ」となだめた。
なのに、今、梁井は正反対のことを云った。二十歳になったら死ぬと。
光陽は絶望に体の力が抜けてゆくのを感じた。

凍る月~漆黒の情人~より

あらすじ

二十歳までしか生きられない。そう予言された子供、鳳光陽は自分の特異体質の意味を知りたいと思っていた。幼い頃から外に出ることを禁じられ、友人を作ることもままならない。それがなぜなのか突き止めたい。そんな気持ちで二十歳の誕生日が近づいたある日、美術鑑定士の梁井から驚く事実を聞かされる。この世には人間と獣のあいのこである獣人が存在し梁井は正に獣人だと言う。さらに、光陽は獣人の餌であり、二十歳になる前に獣人と契約をしなければ死ぬというのだ。
そして、その契約は恐るべき屈辱的な内容だったのだ。


✨✨✨✨✨
喰うものと喰われる者

悲しい身の上のはずの光陽は、意外と能天気で天然なお坊っちゃんなところが良い。家族意外には人見知りな癖に、なぜか梁井にだけはずけずけと思ったことを口にする。
獣人である梁井に最初は畏怖を感じていたけれど、からだを張って光陽を護る姿に心を絆されていく。元々、まっすぐな堅気の祖父に育てられたせいか、正義感や倫理観は立派で間違いは正す!という光陽の一本気なところが、さまざまな事件を引き起こして行く。

梁井もぶっきらぼうで傲慢なところもあるが、素直に光陽に謝ったりする。彼もまた、獣人だが、人間でありたいと願い、自分の生き方に筋を通す男なのだ。

『獣人と餌』でありながら、人間同志の繋がりも出来てゆき、やがてはそこに恋愛にも似た感情が絡まって行く。

2人の成長を見ているこちらにとしては、障害となる光陽の幼なじみや獣人組織の黒いワナにハラハラドキドキが忙しい🎵


圧巻のバトル物

獣人が主人公なだけに、目も覆いたくなる血みどろのバトルが繰り広げられ、クラクラしながらもページをめくる手が止まらない‼️

 獣の牙が肩を抉り、骨の砕ける音を耳にする。光陽の意識はそこでぶつりと途切れた。

凍る月~漆黒の情人~より

どすっと、鈍い音がすぐちかくでした。見ると治弥の左腕が梁井の腹に深くめりこんでいる。その腕は貫通して、向こう側に飛び出ている。

凍る月~漆黒の情人~より

バトルもさることながら、手に汗握る展開にあっという間に読破してしまった‼️
この感動を伝えたい🎵

『凍る月』はシリーズ全8巻の内、3巻までと7巻と8巻で梁井、光陽コンビが描かれる。

①凍る月~漆黒の情人~
②凍る月~ 紅の契り~
③凍る月~灰色の衝動~
⑦凍る月~七色の攻防~
⑧凍る月~瑠璃色の夜明け~


そこに絡む組織のリーダー須王仁とそのパートナー巴を取り巻く物語が4巻5巻

④花の残像
⑤花の慟哭


組織に反旗を翻す獣人、銀の物語が6巻。

⑥銀月夜

それぞれの立場から、獣人である彼らが人間社会で生き抜いて行くための正義と意義のあり方が語られる。そして、獣人の餌でありながら彼らを支える存在でもある光陽や巴の生い立ちは思わず涙失くしては読めない。

なげかけられた疑問

終盤、物語は異質な者を疎い抹殺しようとする人間社会に疑問をなげかける。
果たして、彼らが生き延びることはできるのか?
人間は獣人との共存をどのように受け止めるのか?


あらゆるマイノリティが本当の意味で共存できる社会は実現できるのか?
そんなメッセージを受け取った気がする。


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