残夏のぼろねこ
ぼろねこはこくりこくりと甦った。
階段で爪を研ぐ姿を見た時、こっちをむいて生きてきたと嬉しかった。
もうだめかと幾度となく思って。
看てくれた医者へは、あの後行かず
自分とこで何ともならなかったら命の全うなんだなと
あきらめたのか、あきらめきれなかったのか分からず。
水でふやかしたカリカリキャットフードをすり鉢であたり、茶匙で掻き集めて注射器に入れ、むりくりすまんがと口に注入
私たちは、あきらめてはなかったのかもしれないが
引き留めるつもりもなかった
それが日を追うにつれ、ぼろねこの目やにが少なくなる
生きるかも
ある日、餌箱の前に座ってこちらを見ていた
自分で食べようとしている
使われなくなった餌箱にカリカリをそのまま入れたら、ほんの少し口にした
生きるかも
チュールを1本食べた時、いけると思う
生きるんじゃないかと
そうした日々を重ねるうち
ねこの目やには失せ
畑に出向くようになった
水連鉢の水を飲む、いつもの道程が蘇り
昨日、ネズミを捕まえた
当たり前の風景は、こうしたそれが亡くなるかもしれない時に
こぼれそうでこぼれた感情を庇う実務な処方箋とともに、よみがえったように思うし、たまたまだったかとも思う。
カリカリをドライのまま食べ始めた。
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