マガジンのカバー画像

おもしろ研究紹介

50
最新の研究論文を、分かりやすいように、長すぎない記事でご紹介します
運営しているクリエイター

#note健康部

ウェアラブルデバイスで、マラソンタイムを予測する

今回は、世界中 14000人のランナーのウェアラブルデバイスから収集したビッグデータを解析して、自分のトレーニング量や質から、どのくらいのマラソンタイムがでそうかを予測することを可能にした研究を紹介します。 これにより、あまりレース経験のないランナーにとっては、目標タイムを達成するためのトレーニング計画やその改善の指標になり、またオーバートレーニングによる怪我の予測と予防にもつなげることができます。 紹介論文 Human running performance from r

新型コロナウイルス治療薬レムデシビルの臨床試験結果(NEJM誌掲載)

今回は、COVID-19の治療薬として期待されている抗ウイルス薬”レムデシビル”の臨床試験結果を報告した論文が、NEJMという権威ある医学雑誌に掲載されましたので、そちらの結果の概要を紹介したいと思います。 報道機関のニュースなどでは、レムデシビルの効果についていろんな情報が飛び交っていて、私も混乱しています。 論文をしっかり読めば、この薬の有効性に期待が持てると感じましたので、論文に書かれている結果を淡々とご紹介したいと思います。 追記:レムデシビルは、新型コロナウイルスの

なぜ男性の方が、女性よりも肥満や糖尿病になりやすいのか? : 理由は内臓脂肪の違いにある

今回は、なぜ男性の方が、同年代の女性よりも、肥満や糖尿病になりやすいのか、そのメカニズムを明らかにした研究をご紹介します。 男性の内臓脂肪では、女性よりも炎症が起こりやすくなっており、この内臓脂肪の炎症によって、肥満や糖尿病を発症しやすくなっていることが明らかにされています。 紹介論文 Sex-specific adipose tissue imprinting of regulatory T cells Nature. 2020 Mar;579(7800):581-585

なぜアルコールは脳に悪い?:アルコールが脳の遺伝子発現を変化させ、脳に様々な影響を及ぼしている

今回は、アルコールが体内で分解されてできる酢酸が、脳神経の遺伝子発現を変化させていることを明らかにした研究をご紹介します。 遺伝子発現パターンが変化すると、脳の機能も当然変わるため、これによって、性格や感情の変化、さらには認知症や脳萎縮などの病気が、アルコールによって引き起こされている可能性が示唆されます。 紹介論文 Alcohol metabolism contributes to brain histone acetylation Nature. 2019 Oct;57

読書レビュー: “最高の体調”を読んで実践していること

今回は、”最高の体調”という本を読んで、感銘を受け、自分でもいくつか実践していることをご紹介したいと思います。 人間の体は本来、狩猟採集に適した構造をしているため、現代社会の生活に適応しようとすると、肥満や不眠などの文明病になってしまいます。 文明病から脱却するために、どのようなことを生活に取り入れたら良いか、進化論をベースに、実践的なことが書かれている本ですが、特に私が感銘を受けて実践していることをご紹介します。 今回読んだ本 「最高の体調」鈴木祐 著 クロスメディア・パ

なぜハダカデバネズミはネズミなのに30年以上も生きれる?: 長寿の秘訣とは

今回は、ハダカデバネズミの作り出す特殊なヒアルロン酸が、ハダカデバネズミが長生きするのに重要であることを示した研究を紹介します。 ハダカデバネズミは、30年以上も生きる、ネズミの中では最も長い寿命を持つ生物です。 今回の研究は、彼らの長寿の秘訣が、彼らの作り出している特殊なヒアルロン酸にあることを突き止めています。 人工的にこのヒアルロン酸を生産してヒトに投与するような技術に応用できれば、ヒトのアンチエイジングにも応用できる可能性があります。 紹介論文 Naked mole

カロリー制限は、年取ってからでは効果があまり得られない

今回は、カロリー制限食による寿命の延長効果は、年を老いてからではあまり効果が得られないことを示した研究を紹介します。 カロリー制限食や炭水化物制限によって、寿命が伸びるという研究が多く報告されてきていました。 しかし今回の研究は、カロリー制限によるそのような効果は、年老いてから開始してもあまり効果がなく、比較的若いうちから続けないとあまり効果がないということを示唆しています。 紹介論文 A nutritional memory effect counteracts the

深い睡眠中に脳の老廃物が洗い流されている

今回は、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠中に、脳に溜まった老廃物が洗い流されていることを示した研究をご紹介します。 アルツハイマー病は、脳に老廃物が蓄積してしまうことで発病していきます。 深い睡眠をしっかりとって、脳に老廃物を溜めないことが、こういった脳の老化に起因する病気の予防につながりうることが示唆されます。 紹介論文 Coupled electrophysiological, hemodynamic, and cerebrospinal fluid oscillatio

母親の腸内細菌が、胎児の脳の正常な発育に重要

今回は、母親の腸内細菌によって作られる代謝物が、胎児の脳の発達に大きな影響を及ぼしていることを示した研究をご紹介します。 腸内細菌が健康に与える影響について、様々なことが明らかになってきており、腸内細菌を整えるための発酵食品の重要性が言われています。 妊婦の方も、お腹の子どもの脳の正常な発達のために、腸内細菌叢をしっかり整えた方が良いことが、最近の研究から示唆されています。 紹介論文・参考資料 紹介論文 The maternal microbiome modulates f

自分の細胞を使って、パーキンソン病を根治する

今回は、パーキンソン病の新しい治療法についてのお話です。 自分自身の細胞を使って、ダメージを受けた神経細胞を修復することで、パーキンソン病を根治できる可能性を示した研究を紹介します。 いまだ根治のための有効な治療法がないパーキンソン病ですが、今回の研究で示された治療法が確立されれば、パーキンソン病を根治できる画期的な治療法になる可能性を秘めています。 紹介論文 Reversing a model of Parkinson’s disease with in situ con

運動が、老化した筋肉を若返らせてくれる

今回は、運動が筋肉の幹細胞を若返らせることを示した基礎研究をご紹介します。 今まで、運動が実際にアンチエイジングに対してどのくらいの効果があるのか、なんとなくは言われていましたが、はっきりとは証明されていませんでした。 年を老いても、運動をすることで、筋肉の再生能力を高め、筋肉の老化を阻止できることが明らかにされています。 紹介論文 Exercise rejuvenates quiescent skeletal muscle stem cells in old mice t

リンゴやイチゴなどに多く含まれるフラボノイドが、アルツハイマー病の予防につながる

今回は、リンゴやイチゴなどの果物、お茶に多く含まれる成分であるフラボノイドが、アルツハイマー病を予防しうることを示した20年間に渡る臨床研究をご紹介します。 超高齢社会が到来している現代において、高齢者に多い脳の病気を予防していくことはとても重要です。 特にアルツハイマー病はいまだ有効な治療薬がありません。 アルツハイマー病の予防対策の1つとして、リンゴなどの果物やお茶を定期的に摂ることが効果的であることが、今回紹介する研究から示されています。 紹介研究 Long-term

ノコギリヤシの育毛効果を科学的に示した臨床研究

今回は、ノコギリヤシの抽出成分が男性型脱毛症に対する治療効果が本当にあるのかどうか、実際に検証した臨床研究を紹介します。 ノコギリヤシは本当にAGA(男性型脱毛症)に効くのか?近年、AGA(男性型脱毛症)に効くサプリメントとしてノコギリヤシの成分が注目を集めていますが、実際本当に効果があるのか気になりますよね。 ノコギリヤシの成分の生理活性作用として、男性ホルモンであるテストステロンを、より強力な活性をもつジヒドロテストステロンに変換する5α-リダクターゼという酵素を阻害

ストレスは交感神経を刺激することで、白髪を増やす

今回は、ストレスが白髪を増やすメカニズムを明らかにした論文を紹介します。 ストレスと白髪との相関を科学的に明らかにした論文で、白髪を予防するためには、やはりストレスのない生活を送ることが一番だと言えそうです。 紹介論文Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells (Nature volume 577, pages676–681(2020)) https://p