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「雨降ってきましたよ」

朝、ゴミ出しに行こうと家を出ようとしたらバラバラと勢いよく雨が降り始めた。「あーあ、ついてないなぁ」ボヤきながら傘をさしてゴミを出した。

ふと見ると斜向かいの家のベランダの手摺りでバスタオルが濡れ始めていた。「雨降ってきましたよ」とピンポンを押して告げるべきか否か。勇気がいる。数年前に越してき若い夫婦だ。

斜向かいの家だが、付き合いがないどころか、こちらから挨拶して、やっと軽く頭を下げる人たち。そうで無ければ全くの無視をされる。

別に私が嫌われているのではなく、近所の人に挨拶をする習慣のない家庭なのであろう。

親が挨拶をしないので、当然その家の子どもたちは挨拶をしない。私の発した「おはよう」の言葉に逃げるようにランドセルを揺らして去っていく。

そんなだから「雨降ってきましたよ」と伝えるべきか迷った。通り掛かった近所の人も、首を傾げた。

しかし、どんどん濡れるバスタオルが気の毒で、結局ピンポンを押して「雨が降り始めましたよ」と告げた。

「はい?」と怪訝そうな声。やっぱ言わなきゃ良かったか。余計なお世話だったか。
「洗濯物が見えたから」と言うと「ありがとうございます」と。

迷惑だったのかどうかはわからない。
子どもが沢山いる家で忙しいし、雨が降っているのを承知で、また乾くからとそのままにしていたかも知れない。

しかし、せっかく干した洗濯物が濡れているのを知っていて、私は無視出来なかった。
お節介なおばさんなのだ。

別に親切で声を掛けたわけじゃないんだ。
私の心を満たすためにした行為。
自己満足なんだな。

#エッセイ

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