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ゴミ出しが

ロサンゼルスのゴミ出しは、大きなゴミ箱にゴミを入れて通り沿いに出しておくだけ。

収集車からアームが伸びてきてゴミ箱をむんずと掴み、荷台の上で逆さまにするとドカッとゴミが落ちて回収される。

ハイテクと言うか、合理的と言うか…まぁ楽でいいんだけどね。

ロサンゼルスに引っ越して、1ヶ月も経たない頃、何時ものようにゴミ出しをしようと玄関を出た。

背後でバタンとドアが閉まった瞬間、冷や汗が吹き出した。オートロックなのに鍵を持っていないことを思い出したのだ。

「うわあぁあー!どーしよーー!」

私はまだご近所さんの誰とも話したことがない。日本なら入居の際に隣近所にご挨拶に行くが、アメリカではしないのが常と聴いていた。

しかし、こんなことなら挨拶に行っておけば良かったー!と後悔しても後の祭り。

鍵を持っている夫が帰ってくるのは夜。いや、その前に息子を学校まで迎えに行かねばならぬ。いやいやその前に、このまま待つなんて有り得ない。

我が家は坂道にあったので、ひとつ上の隣家に意を決して助けを求めに行った。上側の家ならリビングから我が家の玄関がよく見えるから、私の事も見ているかも知れないと思ったのだ。

呼び鈴を鳴らすと、上品な老夫婦がにこにこと出迎えてくれた。やはり、私の事はすぐにわかってくれたようだ。私は覚束ない英語で締め出された事と、電話を貸して欲しい旨を伝えた。

ご夫婦は、先ずは景色を見てと、見晴らしの良いリビングに招き入れてくれた。うん、素晴らしい景色だ。

そんなことより夫に電話だ。なんとか夫の電話番号を思い出せた。まだ携帯電話がなく、何度か電話をしていたのが功を奏した。夫に事を伝え、直ぐに帰って来てくれることになった。

そこからが、さらに冷や汗ものだ。なにせ、英語で会話をするのが初めてだ。旦那さんは精神科医でもうリタイアしていることのみわかった。

ロサンゼルスの街を見下ろしながらコーヒーを頂いたが、緊張で味もわからない。ただ我が家より眺めが良かったのは覚えている。(写真は我が家からの眺め)

程なく夫が来てくれて、お礼を言って帰った。
結局、お隣と話したのはそれが最初で最後だったな。

ゴミ出しが冷や汗ものになった時の話。

電話番号は覚えておくと役に立つものだ。

そう言えば、夫の今の携帯番号?覚えていない……夫と息子の携帯番号を改めて覚えておこう。

#エッセイ

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