ROMA/ローマ

画像1

Netflixにて

グラビティ(邦題:ゼログラビティ)のアルフォンソキュアロン監督作品

正直グラビティはかなり前に見た記憶だと、宇宙好きの自分でもあまり好きな作品ではなかった。今見るとまた感想が変わるのかもしれない。なぜならこのROMAは自分にとってマスターピースに間違えないからだ。

はじめに、タイルの床の画からスタートする、しばらくすると波のように水が流れてくる。これは最後に近いシーンの最も感動的なシーンとの対照的な構成になっている。

さらに水に上空を飛ぶ飛行機が写し出される。ここまでの長回しの画の美しさだけでこの映画に引きまれた。

Netflixにおいて1時間12分のドキュメンタリーが公開されている。これを見ると驚くことに家と街はほとんどセットとして作られている。家の家具、家の前の道におかれる車など全てセットとして用意されている。ただそれらが全て映画の時代設定に合わせて用意されているのでドキュメンタリーのようなリアルさがある。

監督の半自伝的作品となっており台本がない状態で現場で物語がつくられたようにはとても思わない作品の自然さであった。むしろ実体験がそのまま投影されたこの作品は、全てのストーリーが単なる日常であり極めてリアリティーのある日常的な中での、世の中にとっては小さい事件でしかないことがひたすら続く作品であるため自然さは当然である。

終盤の主人公の出産後、死産に終わってしまうシーンがある。彼女にとって後に告白する通り邪魔な存在でもあった子供であっても死を目の前にすると思わず泣いてしまう。この彼女にとって大きな事件である死産も医者たちの前に起こると淡々とした作業であり、息を戻さないとわかるともう死んだ処理を行う作業に向かう後継がギャップを感じてショックを与える。

最後の海岸でのシーンは本当に感情がどうしようもなく動かされる。全ての登場人物たちの感情が放出され、お互いを抱きあう。

結局物語は、子供が新しく生まれるわけではなくまた普通の生活へと戻る。つまり、あくまで日常を切り取ったに過ぎない話をここまで感動的に映し出せるのは素晴らしい作品というしかない。

本作品は全編モノクロ撮影でありながら4kを使った超高画質デジタル映画となっている。前時代的なものと最新技術の融合でありながら違和感なくフィクションをリアルに映し出している。

10/10

日常を美しく描き切った素晴らしい作品である。万人におすすめはできないが画面の美しさだけでも見てもらいたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?