視界に入る君。【BL台本】

♂︎白山(しろやま)17歳:
♂︎矢塩(やしお)17歳:

名前だけ出てくる人
花崎(はなさき)

本文⤵︎ 

(昼休みの教室)

矢塩
「白山っていつも俺の事見てるよな」

白山
「………え?」

白山M
「突然、声をかけられ驚いた」

白山
「…気のせいじゃないかな」

矢塩
「あれ、そんなことないと思うんだけどな」

白山
「だとしたら、それはそっちの自意識過剰じゃないの?」

矢塩
「そうか?おっかしいな…。……まあいいや。俺、白山と話してみたかったんだよ」

白山
「は?」

矢塩
「白山ってさ、いつもなんの本読んでんの」

白山
「覗き込むな、距離が近い」

矢塩
「あ〜悪い悪い。だけど、俺白山のこと知りたいからさ」

白山
「……。
………太宰治だよ」

矢塩
「太宰治…?
へぇ〜、お前って予想を裏切らないな〜」

白山
「うるさいな…放っておけよ」

矢塩
「俺も実は読むんだ」

白山
「え?」

矢塩
「どう?意外?」

白山
「…………はぁ。」

矢塩
「なんだよ〜。あ、図星だろ?」

白山
「ほんとにうるさい」

矢塩
「なんだよ〜太宰治トークしようぜ〜」

白山
「………(呆れてる)」

矢塩
「あ、チャイム鳴ったから席戻るわ。また後で来るからな〜」

白山
「いいよ来なくて…」


白山M
「…だけどアイツは、休み時間になる度に俺のところに来た」 


矢塩
「白山〜!屋上で一緒に昼飯食おうぜー!」

白山
「……はぁ。わかったよ」

白山M
「矢塩はクラスで中心的な存在だった。
そんなやつが、突然クラスで浮きも沈みもしない俺に声をかけるようになった。

当然皆が不思議に思った。

俺も不思議だった。」

白山
「お前さ、なんで俺に声かけたの」

矢塩
「……え?だから言ったじゃん、仲良くなりたいって」

白山
「本当にそれだけか?」

矢塩
「ほんとにそれだけ」

白山
「…………あっそ。」

矢塩
「なんだよ、俺のこと知りたくなった?」

白山
「言ってろ」

矢塩
「あははっ!ごめんごめん、嬉しくてさ」

白山
「そうかよ」

矢塩
「てかお前さ、おにぎり1個ってそれで足りんのか?」

白山
「足りるから食べてるんだろ」

矢塩
「すげぇな、俺絶対無理」

白山
「お前は逆に食べ過ぎだろ。
弁当何個あるんだよ」

矢塩
「5個?」

白山
「…………。」

白山M
「実は、矢塩のことは1年の時から知っていた。

いつも隣のクラスから聴こえる賑やかな声。
聞こえすぎるから覚えてしまった。

絶対関わることは無いだろうと思っていたやつと、気づけば一緒に屋上で昼飯を食べる仲になっていた…なんて前の自分が聞いたらどんな反応をするだろうか。

多分、血の気がひいているだろう」


(学校から帰ってきた白山)


白山
「……ただいま」

白山M
「言葉が返ってくることはない。

返さなくさせたのは俺だ。

もう二度と交わることはないであろう親との視線。

もはやどうだってよかった」

(すぐさま自室に向かう白山)

白山
「……あいつは、明日も声をかけてくれるのかな。」

白山M
「俺はいわゆる同性愛者だった。

中学のときに好きになった人が男だった。
もちろん周りには自分と同じような人なんていなかった。

だから、俺が周りと違うということは嫌でも理解した。

理解していたつもりだった。


それなのに俺は、耐えきれず母親にこぼしてしまった。


すると、言葉は返ってこなくなった。

かえってきたのは軽蔑の視線だけだった。

……矢塩もこのことを知ったら、同じ反応をするのだろうか。」

白山
「……………その想像はあまりしたくないな」


(学校休み時間)


矢塩
「白山ってよくみると整った顔してるよな。もっと出せばいいのに」

白山
「はいはいありがとな」

矢塩
「お前、お世辞だと思ってるだろ」

白山
「お世辞でも嬉しいですよー」

矢塩
「そんな可愛くない白山はこうしてやる!」

白山
「うわっ!お前!頭はやめろって!ばか!ぐちゃくちゃになるだろ!」

矢塩
「はははっ!ざまあみろ〜!」

白山
「……はぁ、お前のせいで髪の毛ぐちゃぐちゃだ」

矢塩
「男前だぞ!」

白山
「やかましい」

矢塩
「あ、なあ。今日帰りに駅前のゲーセン行こうぜ。」

白山
「…は?なんで」

矢塩
「なんでって、俺がお前と行きたいから」

白山
「…………お前はまたそういうことを」

矢塩
「ん?」

白山
「わかった。行く」

矢塩
「おー!じゃ、放課後一緒に帰ろうな!」

白山
「はいはい」

白山M
「……だが、その日。俺たちがゲーセンに向かうことは叶わなかった。」


(放課後)


白山
「……なんで今日に限って先生に呼ばれるんだ。

矢塩〜……っていないし。

あいつ教室で待ってるって言ってたのにどこに………」

白山M
「俺は、また理解できていなかったんだ。
この気持ちを抱えながらあいつに接すること…」

白山
「あれは…同じクラスの花崎さんと、矢塩…」

白山M
「花崎さんが、顔を赤らめて矢塩に必死になにかを伝えているようだった。

なにかなんて、聞かなくてもわかった。

背丈の差がちょうどよくて…。
あの二人が一緒に並べば、恋人と勘違いする人も多いだろう。

それくらいお似合いだった。

自分のこの気持ちがおこがましく感じた。」

矢塩
「ごめん…。俺、今気になる人いるから」

白山
「(呟く)…………気になる人。」

白山M
「矢塩にそういわれ、彼女は今にも泣きそうな顔で笑っていた。

そんな彼女がとても眩しかった。

同時に羨ましいと感じた。

自分はそこには立てていないと改めて実感した。」

矢塩
「………あれ、白山?」

白山
「…っ!!…ごめん、やっぱ俺帰る(走りさる)」

矢塩
「え?なんで…

早っ!なんで走るんだよ!」


白山
「っ……(走る)」

矢塩
「ちょっと待てって!なんで逃げるんだよ!」

白山
「……お前はなんで追いかけてくるんだよ!
帰るって言ってるだろ!」

矢塩
「はぁっ!?いきなりそんなこと言われても意味わかんないだろ!」

白山
「うるさい」

矢塩
「は!?」

白山
「うるさいうるさいうるさい!」

矢塩
「待てってッ!(白山の腕を掴む)」

白山
「っ!離せよっ」

矢塩
「……はぁっ、ハァ…帰るって…どうしたんだよ」

白山
「お前には…関係ない」

矢塩
「関係ないって…」

白山
「とにかく関係ないんだよ!」

白山M
「みるな。

こいつに、今の醜い俺を見られたくない。
どうあってもあんなに綺麗になれない俺を見て欲しくない。

こんな…男の俺を見ないでくれ」

矢塩
「さっきのみてた?」

白山
「………。」

矢塩
「……………。俺が一番最初に白山に声かけたときのことと関係あんの」

白山
「っ……うるさい…」

矢塩
「…教えてよ」

白山
「うるさいっ!もうほっとけよ…」

矢塩
「やだ。俺が知りたい」

白山
「…なんなんだよお前。今、お前が俺をほっとけば、変わらないでいられるんだよ…」

白山M
「……涙なんて、流すな俺」

白山
「…お前に分かるはずがない」

矢塩
「分かりたいんだよ」

白山M
「だから、嫌なんだ…。お前を見たくなかったんだ…」

白山
「………もうほんと、やな奴…」

矢塩
「うん…だから、教えてよ」

白山
「………むりだ」

矢塩
「…………。
1年のとき、気づいてたよ。白山のこと」

白山
「え?」

矢塩
「…視線を感じるといつも白山がいた」

白山
「っ……それは、さぞ気持ち悪かったろ」

矢塩
「俺は、白山がどんな奴か気になったよ」

白山
「…なんだよそれ」

矢塩
「だから、もう一度言う。…教えて」

白山
「………俺は」

白山M
「…このことを話したらお前は…」

白山
「……最初は、お前の声が耳に残ったんだ。
いつも、廊下から聴こえる声…。
今まではそんなことなかった。

だから最初はやたら耳に入るお前の声が嫌になりそうだった。」

白山M
「もしかしたら、このときからこの気持ちはあったのだろうか…」

白山
「…けど合同体育のとき、同じ声が聞こえてきて、そのとき初めてお前を見て変わった。

そこからは、気づけば目で追ってた。

声だけだったものが、お前の顔を見たら…お前は一体どんな表情をするのか気になった。

ずっと俺の視界だけにいてくれればいいなんて…

……はは、ほんと気持ち悪いよな」

矢塩
「………」

白山
「……だから、声をかけられたときは驚いた。」

矢塩
「……………。」

白山
「…………………。」

矢塩
「俺はさ…視線感じる度にそっちの方みると白山がいてさ。

最初はなんかしたのかと思った。

2年に上がって同じクラスになって、やっと白山っていう名前を知って。

初めてちゃんと白山の顔を見た。

そのとき、白山の熱のある視線にドキドキした。」

白山
「え?」

矢塩
「だって、俺のことをそんな目で見てくるのお前しかいなかったから」

白山
「いや、さっき告られてただろ…」

矢塩
「やっぱ見てたのか。
でも、花崎さんからもそんな視線は感じなかった」

白山
「………」

矢塩
「…好きになってたんだ。」

白山
「………え?」

矢塩
「気づけば、白山の視界に入ることが嬉しくなった。
嬉しくなったなんてもんじゃない。

お前の視界を独占したかった。」

白山
「なんだよそれ…」

矢塩
「白山はさ、なんで俺の事見てたの?」

白山
「だから、それはさっき…」

矢塩
「教えて」

白山
「………………。」

矢塩
「……」

白山
「…………」

矢塩
「…早く」

白山
「……っ。好きなんだよっ!」

矢塩
「…………っはは!………すっげー嬉しい」

白山
「なっ、なんなんだよ…」

矢塩
「ははっ、ほんと白山が逃げ出したときどうしようかと思った。
俺がせっかく徐々に距離詰めていこうと思ってたのにさ」

白山
「……そーかよ」

矢塩
「(白山の手をとる)……これからも、お前の視界を俺いっぱいにしてくれよ」

白山
「はっ?いや、だから近いって」

矢塩
「いいだろ、もう付き合ってるんだから」

白山
「なっ!?」

矢塩
「だから、今日は一緒に帰ろうぜ。」



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