数学ダージリン (ショートショート)
裕子は、紅茶会社のマーケティング部で働いている。と言っても、日々の仕事は紅茶の品質確認ばかり。
「ユウコさん、ナマステ」
上司が検査用の茶葉を差し出す。ちなみに上司はインド出身。
名前が長いので、裕子は密かにナマステさんと呼んでいる。
ある日の事、後学のため飲んで欲しい紅茶があると言われた。了解すると、ナマステさんは美しい幾何学模様の紅茶缶を取り出し準備を始める。
「ユウコさん。昔、最上級茶葉、全部イギリス買ウ、ダカラ、インド買エナイ」
へー、最上級品はイギリスが独占したの?
「私の国、数学勉強スルネ。ソシテ解ッタ。美しいモノ、数学ト同ジ」
え、どういう事?
「答エ見ツケル、メニーメニートライ必要」
ナマステさんが茶葉の入ったポットにお湯を注ぐ。茶葉が踊り、裕子の心も踊り出しそう。上品な香りがふわり漂う。
「最上級茶葉ナイ、デモ、ベストブレンド見ツケタ、美しいダージリンネ」
どうぞ、と鮮やかな紅色が注がれたカップ。裕子はそっと口に運んだ。
(413字)
たらはかにさんの企画に参加です。なお、この物語はフィクションであり、登場人物、団体名等は全て架空のものです。
最後までお読みいただきありがとうございました💖
https://note.com/tarahakani/n/nedc05272fdc7?sub_rt=share_pw
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