白骨化スマホ(ショートショート)
ここは若者がたむろする横丁酒場。酔いが回った若者二人の前に、マジックを披露したいという男が現れる。
「スマホを貸してもらえますか?」
「いいよ、これ使って」
「おい、それ俺の新しいスマホ!」
そのやり取りを横目に、男はトランプを取り出しカードを一枚スマホの上に置く。それはくたびれたローブを着て鎌を持った骸骨の図柄。
おもむろに片手を上げ、男はカードに手招きする。
するとスマホと一体化したカードがゆっくり起き上がった。
「え?」
「ヤバっ」
若者の一人が自分のスマホで撮影しようとするが、スマホとカードはすぐに倒れた。男がカードを戻すと、スマホは火を噴き燃えカスとなる。
「マジヤバい」
「おい、ふざけんな!」
詰め寄られた男は、燃えカスの上にカードを置く。
今度は道化の図柄。
片手でカードをなぞると若者のスマホが元通りに。
あっけにとられる二人。
「朝には紅顔ありて夕べには白骨となる」
そう呟いて消えた男は、開発競争に燃え尽きたスマホ会社元研究員だった。
(414文字)
たらはかにさんの企画に参加です。
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