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映画を二度見る

数年越しに見た「君の名は。」の2回目がビックリするくらい感動したって話。ややイキった文章になっているので気を付けて欲しい(?)

幼少時に金曜ロードショーで繰り返し流れてる映画以外は同じ映画を二度見ることはこれまでほとんどなかった。本と映画にはよく触れてきたからか物語に対しては記憶力が良かった。1回観た時点で序盤の伏線とどう繋がっていたかや、細かいシーンのやり取りなども覚えている方だったので映画を2回どころか複数回観る人のことがあまり信じられなかった。

正直に言ってしまえば、その時間で新しい映画を観た方が良くないか?と思っていた。特典目的や半ばセラピー的に映画館に行っている人はわからないでもないが、物語を理解するのに2回観る必要性を感じたことは無かった。子供の時に観た、もしくは一度観てからいろんな経験をした歳月が流れたならば再度見る価値もあろう、くらいに考えていた。

「君の名は。」もSF的な要素が多分に混じる映画だからか初見では全体が理解できず複数回観ることでわかったなどという話が出ていたが、そういった人がいることは理解できるが、自分としてはそんなことがなかった。

新海作品には中学生のころに2chのおすすめアニメで秒速5センチメートルを紹介されていたのを見てから観て、心に深い傷を負ったあたりから触れており、「ほしのこえ」、「雲のむこう、約束の場所」、「星を追う子供」、「言の葉の庭」と一通り見ていたし、SFはもとより好きだった。

なので三葉側のTVと瀧側のTVで流れていることが違ったことから彗星が影響を持つだろうなと思っていたし、星が絡むなら時間や空間も絡むだろうなと予想しながら観ていた。各シーンにはもちろん感動したし、宮水神社のご神体がある山の頂上で三葉と瀧が出会うシーンでは普通に泣いた。最後のシーンは秒速を思い出して、おいおい流石に新海もう一回はやらないよな?とハラハラしながら観ていた。RADWIMPSにもあの時代の大学生上がりのご多分に漏れずハマった時期があったので、物語に沿った完璧な楽曲に感動したし未だにカラオケで歌っている。

ただそれでも、当時売れに売れて、流行りに流行ってカップル御用達のように紹介されてもう見るの5回目ですーみたいに言ってる人々を見て、それだけ見なければならないってどれだけ作品を理解しようとせずに見ているんだと侮蔑の感情が混じってしまっていた。純粋に作品を評価できていなかったように思う。それぞれの人がどの程度の理解度を持っていて何回も観るのもどうでもいいし自由なのだが、それをファンの証明であるかのように賢しらに吹聴して回らないでくれと感じていた。

その状態を経て数年経ち、改めて「君の名は。」を観た。

流石にもう随分大人になった。当時の変な偏見のメガネもとれた状態で観た。あー「君の名は。」かぁ当時面白かったけどネタがわかってる状態で二回観るような内容でもないよなぁと軽い気持ちで見始めた。

心から震えた。

あまりにも作中に無駄なシーンがない。2時間に納まっているのが本当に信じられないほど物語の質が高い。三葉と瀧のそれぞれの視点から見える物語、登下校風景やお祭りなどから自然に説明される舞台設定、2つそれがあるだけでも頭を抱えそうなのにそれらをまとめるSF要素、混ざり合って大きな展開を見せる二人、そこに起こる恋模様、完璧な構成過ぎる。
劇伴も素晴らしい、キャラクターも魅力的、心情も存分に描かれている、一般にウケづらいSFでありながら理解しやすく噛み砕かれたストーリーテリングのうまさ。なんなら細かいところが理解できなくて楽しめるようになっている。そしてもちろん新海作品特有の美しい美術。

え?こんな完璧な映画だったっけ?
目から鱗が落ちるをリアルに体験した。

もう冷静だと思っていたし、精神的に成長できたと思っていたが、それでも分厚い色眼鏡をつけてしまっていた。そのことに気づいた。当時あれだけ流行ったのも無理はない。そりゃそうだ、面白いよ。自分が逆張りオタク拗らせすぎてたことにショックすら受けた。

そこで2回映画を観る面白さに気づいた。
自分の映画を観る目線として、一回目は物語を理解することに集中しているせいで映画全体のクオリティに目が向いていないことに気づいた。物語を理解することに集中しているので細かいシーンや伏線は覚えているのだが、それが何分段階で流れて感情を想起させる展開がどの程度の頻度で来て物語のピーク作りがどこで行われているのか、作り手がどういった意図で置いているカットなのか、見れていなかった。そういったことはストーリーがわかっている状態で、展開がわかっているからこそ理解できることだと気づいた。映画を楽しむという点では初見に勝るものはないと今でも思うが、映画を嗜むというか味わうという点では2回目のほうが勝るかもしれないと思い始めた。それが自分が大好きな映画なら猶更楽しいだろう。

これまでの自分の狭量さに辟易とする。
自分の中の偏見に気づき、それが崩れる瞬間は世界が開けるような気持になるが、これに関しては己の愚かさに向き合ったようで心苦しくすらあった。
それでも世界は開けた。映画2回観るのって、面白い。

それをきづかせてくれた「君の名は。」には感謝の念すらあり、11月11日には新海誠最新作の「すずめの戸締り」が公開される。めちゃくちゃ楽しみだ。複数回観たくなるような映画だと良いな。

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