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8月7日は花の日

毎年8月7日になると思い出す、前職の上司。
これは、私が初めてスロットを打ったお話だ。



ぼんやりとした記憶だが、夏の夜勤明けだったのは覚えてる。
退勤後、喫煙所でタバコを吸い終わり今から帰ろうかなと思っていた所、入れ違いで出社した早番の上司(以降Mさん)が入ってきた。

「おーう、お疲れぇ〜。」
眠たそうな顔で上司が話しかけてきた。

「お疲れ様です。」

「あ、そういえば影山、お前さパチンコとかスロットやるの?」

「ん〜、俺実はやったことないんですよね。そういうの。興味あんまりなくて…」

当時の私は、ギャンブルなど毛頭興味もなくやんわりと断った。


「まじか〜、今度スロット誘おうと思ってたんだけど。」
Mさんは残念そうに言った。

私は、残念そうな顔をされると可哀想になってきてしまうというか、出来れば期待に応えたい性格なのでその残念そうな声色を聞いて少し考えたあと

「でも、経験として一回行ってみたいですね!」
と言ってしまった。

「おっ、まじか!じゃあ8月7日一緒に休むべ、シフト調整するわ。」
Mさんは私の部署のリーダーだったので、こういうパワープレイができた。
私も、連勤ばかりだったので休みを貰えてラッキーだと思っていた。

「んじゃ、お疲れ様な!仕事終わったらLINEするわ!」
Mさんがタイムカードを押す時間が迫っていたので会話はそこで終了した。

その日の夕方、MさんからLINEが来た。
『7日なんだけど、朝8時に来れる?』

朝8時、この時間が意味するのは私にとっての徹夜が確定しということだった。正しくは徹昼かもしれない。
というのも、私はその時夜勤をしていたので、昼夜逆転は勿論、退勤時間が朝6時なので休みと言っても8月7日の朝6時までは仕事をしている訳なのだ。

『了解です!』
しかし、そんな杞憂とは反するように私の返信は軽快であった。

それに対し、Mさんはグッドサインのスタンプを押して後はきたる7日に備えるだけだ。と言った様子だった。

そして当日、私は夜勤を終わらせそのまま直行で例の「アムズガーデン」へと向かった。
着いたのが6時45分くらいだったので、アラームをかけ車の中で少し仮眠を取ることにした。

ピリリ…ピリリ…

アラームの音で目が覚めた。
駐車場には朝一でスロットを打つであろう人達の車がチラホラ見えた。
だが、その中にMさんの車は無かった。

まあ少し遅れて来るのかな、と思いウトウトしながら待っているとMさんが来た。既に8時40分だった。

「ごめん、待ったべ。」
バツが悪そうにMさんが言った。
「寝てたんで大丈夫ですよ、それにしても結構並ぶんですね。」

「そりゃそうだよ、今日イベント日だもん。」
2人で整理券を貰って、10分ほど待ちいよいよ入店。

初めてのパチンコ屋は思ってたのと違った。
綺麗な赤い絨毯キラキラした筐体、なんだかゲームセンターみたいだな思いながらMさんとハナハナの台へ向かった。

椅子に座るとMさんのスロット解説が始まった。
「ハナハナっていうのは、このリールの横にある花が光ると当たりなんだよ。」

「へぇ〜案外簡単なんですね。」
私がそう言うとMさんは(わかってないなあ〜)という顔で解説を続けた。
「でも、チェリーとかそういうのもあるから、一概に簡単って訳でもないんだよね。まあ、とりあえず打ってみるか。」

私は、「OKです、ここにお札入れればいいんですよね。」といい、途中のコンビニで下ろしてきた5000円札を入れた。

ジャラジャラと出てくるメダルそれを自動販売機の硬貨の部分みたいなところに入れてレバーを押してスタートした。
初めての体験だった。

20ゲームほど回してどんどん金が無くなっていく、私は正直
(何が面白いんじゃこんなギャンブル)と思っていた。しかし5000円分はちゃんと打とうと思っていたのでそのまま遊戯を続けた。
50ゲームが過ぎた辺り、つまらないなと思いながらレバーを押した。

瞬間、リールの両脇にあるハイビスカスがキラキラと光り出したのだ。

快感だった。
隣にいるMさんは「やったじゃん、こうなったら7狙ってボタン押して、むずいかもだけど。」

7を狙って揃える。私にとってそんなのは朝飯前だった。

というのも、当時の私はPS4でディシディアNTのセフィロスというキャラを使っていてJDC(ジャストダッシュキャンセル)という難易度の高い技を練習していたからである。(ちなみに、猶予フレームが3フレームなので目押しの10倍くらいは難しい)

ダン! 7、ダン!7、 …ダン!

7。

気持ちがいい。これが、ギャンブルなんだ。
これが、快楽なのか。私は初めてのスロットに酔いしれていた。
それからというもの、ビギナーズラックなのか何度もハイビスカスが光りあっという間に私のドル箱はメダルでいっぱいになった。

いつもより、タバコが美味しかった。
その時吸ってたタバコは、メビウスオプションパープルだったと思う。

一方Mさんは、全然当たっていなかった。
当たる気配すらなかった。

「ちょっと、台変えるわ。」
そういうと、Mさんはどこかへ行ってしまった。

私はその後も快調で、スロットが楽しいと感じつつあった。

しばらくして、後ろからMさんの、声がした。
「悪ぃ影山、ちょっとメダル貰っていい?」

「あ、いいですよ!」

「ごめんまじありがと!」
Mさんは、メダルが満パンに詰まったドル箱を持ってまたどこかへ行ってしまった。
パチンコ打つようになった今思えば、当時の私は随分気前が良い奴だなと思う。

それからMさんの悪運が移ったのごとく当たりが来ない。花が光らない。ハイビスカスがキラキラしてくれない。

30分ほど過ぎて、Mさんが帰ってきた。
「影山〜、今日はもう帰るべ。」
賛成だった。というのも私のメダルが減る一方なので、これ以上減らしたくなかったからだ。

あと、すごく眠たかった。

2人でメダルを換金しに行き8000円を貰った。
私は、あんなに気持ちいい経験ができてお金も貰えるなんてサイコーじゃん。と思っていた。

その後、で2人でカレーを食べに行ってその後解散した。勿論、割り勘とかじゃなくて俺の勝ち分で食べた。Mさんはケチだなと思った。


それからの私はスロットにハマる…ことは無く、普通にいつも通りすごしていた。

あれから、6年後今の会社でパチンコに誘われてすっかりハマってしまった僕。しばらく打ってないけど多分ガンダムSEEDのパチンコが出たら多分打っちゃうんだろうな。

奇しくも、ガンダムSEEDの導入日も8月7日だ。
あの頃の俺はホモじゃなかったし、賭け事もしなかったなあ。
そんなことをふと思い出してノートに書いてみた。

ちなみに、Mさんには10万円貸したけどしばらく帰ってこなくて、工場長に言って返すよう催促して頂きようやく返してもらった。
そういうのもあって、居づらくなって退職した。

あと、今吸ってるアメスピのゴールドはMさんの影響で吸い始めた。Mさんに勧められた6年前からずっと吸ってる。

8月7日 久々にMさんを思い出しながらパチンコを打ってみようかなと思う。

そんな、自分語りでした。

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