例えば、あの日のハッカ飴
今日、ホームセンターで買い物をしたついでにお菓子売り場を覗いてみた。
どうしてホームセンターのお菓子売り場っておばあちゃんちで見たことあるお菓子が沢山並んでいるんだろう。
ファミリーパックのおせんべいなんて買わないなあ、と思いながら棚の裏にある飴玉のコーナーをみたらハッカ飴があった。そのハッカ飴のパッケージを見た瞬間に僕は昔の記憶がブワッと蘇ってきた。
幼稚園の頃から何をするにしても一緒だった親友がいた。親子会でカレーを作ってる時にふざけて怒られるのも一緒。近所なので帰り道も一緒。
休みの日にはいつもその子の家に遊びに行って、ポケモンの指人形が枕の下にあるゴツゴツとしたベッドで横になりながら「カービィのエアライド」をしたり、外でオタマジャクシを捕まえたりして遊んでいた。
そしてその遊びに飽きると決まって僕たちは、その子の家の裏手にあるおじいちゃんの家に暇を潰しに行く。名前は分からない、ただ僕たちはおじいちゃんと呼んでいた。
小学生3年生くらいの子が玄関を勝手に開けて
「おじいちゃーん」と大きな声で呼ぶと、長身痩躯で白髪のおじいちゃんが出てきて、ニコニコしながら「また来たのか〜、少し待っててな」
と言って奥からハッカ飴の袋を持ってくる。
そして必ず、ハッカ飴を1人2個ずつ。
骨張った手を僕らの手にねじ込ませるように渡してくる。
僕らもそれがいつもの事だとわかっているので、声を揃えて「ありがとう」とだけ言っておじいちゃんと僕らの3人で、土間の段差に腰掛けて飴を舐め切るまで話す。途中で遊びたくなったらガリガリと飴玉を砕いて外に出たりする。そんな記憶。
実を言うと、僕はハッカ飴が嫌いだった。
口がスースーして嫌な感じだし、苦いような味もするし、本当はチョコとかクッキーが良かったけど、おやつが無いよりマシだから舐めていただけだった。残ったひとつは家に帰って父親にあげていた。
だけど今日、勇気を出してホームセンターで買って食べてみた。
あの日食べたハッカ飴と同じ味だ。当時と違って美味しく感じるし、飽きてガリガリ噛むこともない。
大人になったのかな、なんて思う。
だけど、本当は味なんてどうでも良かったんだ。
優しいおじいちゃんと、親友と僕とで過ごす穏やかな時間。
僕はあの時間がたまらなく好きだったんだ。