zakki 20201221

zakki 20201221

 年末が好きで、特にクリスマスが過ぎてからがいちばん好きだった。

 一年の終わりが近づくにつれて世間は慌ただしくなり、それはクリスマスという華々しいイベントの終わりとともに最高潮に達する。十二月二十六日から二十九日までの夜はどこか空虚で、北風が吹き抜ける夜の路上は闇の奥から何かが迫ってくるような印象をいつもぼくに与えた。大長編の物語が終わりに近づいていくときにもぼくはそういう印象を抱く。同じように好きだ。

 だが、そういう感覚も過去の話で、ぼくはこの一年全く労働というものをしていないため師走などというものもどこ吹く風である。インターネットを眺めて人々のどうでも良い呟きやニュースで一年が終わることを感じたりはするが、ぼくはといえば狭い自分の部屋で毎日寝起きしているだけなので季節感などあるはずもない。

 そういう状況を少し悲しいとも、同時に面白いとも思う。大学時代も同じようにダメ人間として生活した時期はあったが、あの頃は今よりも若く感じやすく、また一応大学には出ていたから四季の移り変わりにも敏感だった。いまぼくは変化しない状況に置かれたことで移り変わる季節に心揺れることもない。大切なことを忘れてしまったのに、それが一体どんなものだったかも思い出せない。ちょうど坂本慎太郎の詩世界のような状況である。

 坂本慎太郎の言葉を借りればこれは悲劇なのかもしれないが、とりあえず生きている自分を褒めて日々を過ごしている。

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