20200804

 夏、冷房、うどんが美味い。

 ほぼ一日中布団に染み込んで生活しているのだが、布団に染み込んでいると、これまでに知り合った人たちから代わる代わる甘えるなと言われる譫妄が生じる。父親、教師、昔の恋人、上司、友人。まるで剣道のかかり稽古のようにぼくに甘えるなと声をかけてはメリーゴーランドのように通り過ぎ、登場人物が全員ぼくを責め終えると三十分ぐらいして再び最初に戻る。暑いわ妄想は鬱陶しいわでこれでは寝られたものではない。そんなときはデパス。これはもう気分も落ち着くし寝られるし肩凝りも治る。胃は痛くなるが発熱した脳がすっと冷め、やがて幻聴どもも遠ざかっていく。この気分のまま起きたらきっと素晴らしい一日になるだろうなと考え、そうなったなら美味しいものをたくさん食べようと思う。うどん、大根おろし、すだち、ナスの天ぷら。無論目覚めた瞬間に全ては灰燼に帰している。嘘の薬はどこまでいっても嘘だらけだった。

 


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