zakki 2019/09/20

 AC/DCについて。

 AC/DCというバンドのことを世界でいちばん愛している。
 彼らについて素晴らしい点を挙げていこうとすればどれだけ言葉を尽くしても足りない。だが、その音楽はただ騒ぐだけを目的とした音楽ファンや、コンポの前で難しい顔をして座りこむ音楽ファンからも同様の反応を引き出すだろう。間違いなく全員が反復するギターの音色に合わせて歌い、そしてロックンロール史上最も単純なドラムフレーズに踊り狂う。

彼らは四十年以上も活動をつづけた現在においてもなお旧態依然としたロックンロールスタイルを貫いており、だがそれ故に音楽的にもバンド的にもソリッドな部分を失わずにいる。その姿勢は多くの同業者、それも世界中に活躍するミュージシャンたちから尊敬を集めている。

 彼らの音楽についてひとつ、彼らが思考停止状態で仕事をしている、というひどい誤解を正しておきたい。AC/DCの音楽は常にリフ主体のロックンロールであり、絶対にギター、ベース、ドラムの編成を崩さない。彼らは70年代から2010年代までの長い期間を過ごしてきたが、その中で一度足りともそのスタイルを変えることはなかった。例えば80年代にはヒップホップの分野で活躍してきたプロデューサーであるリック・ルービンを起用するなどの試みもありはしたが、それによって彼らの音楽にドラスティックな変化が巻き起こることは些かもありはしなかった。だが、彼らはそのひたすら繰り返される活動の中で一度たりとも新鮮さを失うことはなかった。いつだって彼らの作品が期待外れだったことはない。それはバンド結成から三十五年が経過した2008年に発売されたアルバム「悪魔の氷」が全世界で一千万枚近くのセールスを記録したことからも間違いない。

 どうしてそのようなことが起こるのか。プロデューサーというものはアルバム製作というにおいて大きな存在感を持つものだが、どうもこのバンドに関してはあまりそういった事実は関係ないらしい。これに関してしばらくの間彼らに関して書かれた自伝などを読んだところによると、彼らは自分たちの意に沿わない提案をするプロデューサーは否応なく首にしていくそうだ。バンド内においてアンガス&マルコム・ヤングの兄弟は完璧な主導権を握っているようであり、それはレコード会社に対しても同様のようである。

 彼らは完璧に自分たちをコントロールし、そして自分たちのイメージを崩すような真似は一切しない。これは批評家たちから「偉大なるマンネリズム」と呼ばれ、現在でもそのままに受け継がれている。まさに伝統工芸のようなブランドの守り方を成功させたバンドだ。
 そして彼らにとって最も幸福なことは、ファンもまた永遠に変わらないAC/DCの姿を常に求めているということだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?