zakki 2019/09/16

 ツンデレについて。

 いまにして思えば、ぼくの青春はツンデレと共にあった。
 シャナ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、桂ヒナギク、神崎・H・アリア、御坂美琴、朝倉由夢、逢坂大河、椰子なごみ。ざっと思い出すだけでもこれだけ、更に正確にリスト化しようとすればとんでもなく時間がかかってしまうほどツンデレ属性を持つヒロインが現れた。多感な時期に爛漫と咲き誇るように現れたツンデレヒロインたちは、それまで少年の心でアニメを楽しんでいたぼくに訪れた第二次性徴を乱暴に加速させた。特にシャナとの出会いによってぼくはまだ淡い思いにとどめていた「キャラ萌え」に開花し、彼女のグッズが欲しいがために生れてはじめて家から10㎞離れたアニメイトまで自転車で向かった経験がある。もちろん途中の休憩ではリュックに入れていたお弁当のメロンパンを食べた。いま考えると本当にバカとしか言いようがない。冗談抜きで恥ずかしくなってきた。
 だが、そういう恥ずかしい行為をつい実行に移してしまうぐらいあの頃のツンデレキャラたちには魅力があった。ぼくは何度も何度も自転車でアニメイトに向かって灼眼のシャナやゼロの使い魔の新刊を購入し、お小遣いを貯めては兄のバイクの後ろに乗せてもらい遠く離れたエロゲショップでつよきすを買った。

 理解しがたいと思うが、あの頃のぼくにとってツンデレは異常な中毒性があった。特にライトノベルやアニメなどで少しずつ主人公とヒロインの中が縮まっていくシークエンスは得も言われぬものがある。ツンが完全にデレる前の友人以上恋人未満の状態が永遠に続けば良いと考えた。毎回新刊を(あるいは来週の最新話を)待ち遠しく思い、ツンデレヒロインが少しでも主人公に心を許す描写があるとひとり自室で悶えた。

 逆に、とある魔術の禁書目録など毎回別のヒロインが登場するような作品で、人気のあるツンデレキャラの描写が殆どない巻を読むと発狂しそうになったものだ。くそ、いま美琴はどうしているんだよ!

 また、エロゲーをやれば途中で我慢できずにツンがデレるまで一気呵成にプレイしてしまうことが多かった。果たしてこれからデレるとわかっているキャラを途中まで攻略してすやすやと布団で眠ることができるだろうか。残念ながらぼくは通信簿に我慢ができない子だと書かれていた。

 こうしてかつての思い出を反芻しているだけで胸に熱いものがこみ上げてくる。いまでも釘宮理恵の声を聴くと顔面を巌のように硬直させてにやつきを抑える努力が必要になる。いわゆる釘宮病というやつだが、おそらくぼくと同じぐらいの年齢のおたくにはいまでもこの症状に悩む人間がいるのではないだろうか。

 他の多くの記号と同じようにいまではツンデレのブームもひと段落し、作品のメインに据えられることも少なくなった。だがそれでもサブヒロインにはかなりの確率でツンデレ傾向をもつキャラクターが配置され、確固たる地位を築いている。いまもオタクたちの中にツンデレの灯は消えることなく、ぼくは今でもあの頃に多感な時期を過ごしたことを幸せに思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?