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ボーカルミックスなんもわからんから「チョットワカル」になれるかもしれないまとめ


普段インスト系ばっか作っていてボーカルミックス等が全く分からない人間だったのですが、色々調べて試行錯誤してようやく「チョットワカル」のレベルになったのでメモを兼ねて色々書いていきます。

注意

  • あくまでも「自分はこんな感じでやりました」なので100%の正解ではありません。一つの参考資料レベルで捉えてもらえればと思います。

  • あとボーカル曲をずっと作ってる方からすると「これ違くない……?」など色々ツッコミが多々あると思います。その際は温かい目で見てあげて下さい。あと差し支えなければご指導下さい。勉強になります……


ボーカル:依頼〜wav配置まで

■ボーカル依頼時にお願いしていること

【依頼事項1】可能であればモノラルでの録音をお願いしています。
後述もしようと思っていたのですが正直まずこれが一番大事なので書きます。
何度か経験しましたが元となるボーカルデータはモノラルで録音して頂きます。
※ステレオで納品されてもプラグインでモノラルにすれば良いのですが

【依頼事項2】以下の理由からボーカルは2〜3テイクほど録って頂いています。

  • ダブリングを部分的に行うため

    • ダブリング:別テイクのボーカルを裏でうっすら重ね、ボーカルに厚みを出すこと。楽曲によっては不要

  • 各所各所で最善のテイクを抜粋してメインボーカルとして使用するため

【依頼事項3】44.1kHz以上 / 16bits 以上 での録音を推奨します。
48kHzになっても24bitsになってもOKです。


■ボーカルwavの調整

頂いたボーカルのデータをDAWに配置して、ボーカルの元データから調整していきます。

【調整1】タイミングの修正
部分部分でどうしても歌の入りなどにズレが生じることがあるので、ボーカルを部分的に分割してタイミングを微調整します。

切って微調整。

【調整2】音量の調整
例えば「『さようなら』の "よ" だけ他と比べて小さく聞き取れない」といったケースがあれば、その部分だけ分割して部分的に音量を上げます。

例えばこちらでは、それぞれ0.00dB(デフォルト)・4.50dB・-1.50dBに調整。

【調整3】ピッチ修正
どうしても100%ピッタリ正確に音程を取るのはなかなか難しく、ズレてしまうこともあります。露骨にピッチのズレが気になる箇所に関してはピッチを修正して行きます。
本当はMelodyneなどの優秀なピッチ補正ソフトウェアがあるのでそれを利用するのが一番手っ取り早いのですが、僕は使用しているDAWであるDigital Performerのデフォルト機能でピッチを直接弄れる機能があるので、それで調整しています。


ボーカル:プラグインで調整

【調整1】ステレオで納品されている場合、モノラルにする
あくまでも経験上の話になりますがこれは必須だと思います。しっかりと真ん中で声が出てきて聞こえ方が全然違います。
あとステレオだと、左右の位相の若干のズレによって今後かけていくプラグインで微妙に左右のかかり方が変わってしまうのもあり、そもそもミックスへの影響も考えられます。

パンを真ん中にしてモノラルに。

【調整2】ノイズ除去などを行う
RX (iZotope)
にはボーカルミックス向けの便利な機能を持ったプラグインが多数あります。具体的には以下を利用して綺麗にして行きます。

  • De-click:「プツッ」みたいなクリック系のノイズを消します。

  • Breath Control:ボーカルに含まれるブレス(息継ぎ)を検知して自動で消します。

RX 8 De-click。

【調整3】ディエッサーで歯擦音(しさつおん)を消す

サ行の音には空気が歯に当たる時に発生する歯擦音(しさつおん、シビランス)が多く含まれている。この歯擦音は数KHz程度の高い周波数成分を持ち、マイクで録音すると目立ちすぎる事がある……

https://www.g200kg.com/jp/docs/dic/deesser.html

正直、解説・使用前後のイメージ等は上記の参考文献を見た方が早いです。さ行に含まれる歯擦音をこれで取り除いていきます。あとはカ行・タ行あたりにも効果抜群ですね。

Waves - DeEsser

【調整4】コンプレッサーで圧縮する
ざっくり言えばボーカルの音量差を無くしたりボーカルに圧を出すために使います。

favfilter - Pro-C 2。実はちゃんと分かっていないのでもっと理解したい。

【調整5】サチュレーターで倍音を増やす
ちょっとだけ歪みを与えることによって、ボーカルを少し華やかかつ力強い印象にします。僕はWavesの出しているMagma Lil Tubeを使っています。SESNSITIVYをSoftに設定して、DRIVEを少しかけてあげるとそれだけでボーカルが更にパワーが出て良い感じになります。

Waves - Magma Lil Tube

【調整6】EQで調整する
150Hz以下が不要そうであれば削ります。また、2kHz以上を少しブースト(1.5dB〜3.0dB程度)して声の通りを良くします。トラック全体と同時再生して「なんかボーカルが埋もれる印象があるな……」と思ったら、300〜600Hzあたりを下げるとこもった印象が無くなります。
もっとパキパキした印象にしたいなら、3kHz〜5kHzあたりを1.0dB程更に追加で上げてみます。

デフォルトのEQプラグイン。

【調整7】リバーブとディレイをかける
かけすぎ注意。
歌モノの場合、意図的に狙ったもので無ければボーカルを単体で聞いて「確かにソロで聴いたらリバーブとディレイかかってるな〜」程度に浅め短めで良いです。具体的に言うと、リバーブについてはDecay1.0s未満、Mix15%ぐらいでも良いんじゃないかな……?といったところです。深すぎると浮くしミックスの妨げになります。
例えばトランス系とかEDM系ならもうちょっと深くても良いのですが、「どれぐらいの深さでかけて良いのか?」については特定ジャンルの様々な曲を聴いてそれをリファレンスにすると良いです。

Native Instruments - Raum

ダブリング用のボーカルを用意、配置

例えば3テイクぐらい予め録音していたとして、2テイク目をメインボーカルに適用したとします。その場合1テイク目か3テイク目をダブリング用として利用します。
例えばサビなどの迫力を出したいところで、ダブリングのボーカルをメインボーカルと合わせて配置します。

ピンクがメインボーカル、黄色がダブリング

ピッチ調整だったりエフェクトのかけ方などは前述の通りです。あとはお好みでダブリング効果が得られるプラグインをかけて、更にダブリング感をもう少しだけ強くしても良いかもしれません。

Waves - Doubler2。ちょっとピッチとタイミングをズラして同時に鳴らしてくれます。

必要であればVocalSynth 2でハモりパートを用意する

削除さんが過去にXにて投稿していた内容が非常に有用だったのでこちらにも備忘録として書いておきます。ハモりパートをお手軽に作る際は、ボコーダー系プラグインであるVocalSynth 2が便利です。

  • オーディオトラックにVocalSynth2を差し込み、VocalSynth 2を「MIDI Mode」にして、音は「Polyvox」を指定

  • ハモり用のパートをMIDIで打ち込んで、MIDIのアウトプット先をオーディオトラックに差し込んだVocalSynth 2に指定

iZotope - VocalSynth 2

単体で聞くとちょっとボカロ感が強いのですが、メインボーカルと一緒に鳴らせば違和感がありません。


これでようやく一通り完了です。あとは通しで聞いたり、一部分だけ抜粋して聞いてみたりして気に食わない箇所・エフェクトのかけ具合を調整して行きます。

最終的にこうなった。

ボーカル曲を何か作ってみたいな〜と思った方のヒントになれば幸いです。

参考文献

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