忘れるということ
猶予という概念がこの世には無いと思う程に、楽しい時間というのは過ぎていくようで、記憶に残したい素敵な一場面というのは1秒も続かないような「冷たいパステルカラーの静画」になり、記憶になってしまいます。
何かのムービーに残したとしても、例えそれが人間の視覚程優れたものであっても、体温、匂い、時が止まる緊張感、滲んだ汗などは忘却の彼方。
ただ、それら全てを忘れても、引っ掻き傷を持つ一瞬というのは淘汰される事なく、限りなく流れ続ける。
さて、本日紹介する僕のお気に入りは、
Ralph Laurenのボタンダウンシャツです。
このシャツは、今持ってる私服の中で、1番長く時間を共に過ごしてきた子です。
出会うは高校1年の誕生日プレゼント。とある友達と、その友達の知り合い×2に、とある時間になるとモンスターが座敷に襲撃しに来る、「ロックアップ」というお店でバースデーを祝って頂いた。
監獄でよく分からない不味そうなご飯を食べてた記憶が凄く鮮明に残っている。
そこで、このシャツを頂いたのですが、当時の僕はラルフというブランド物に凄く感動したのです。それまでに着ていた物なんて、UNIQLOやRight-onで買ってもらったザラザラのシャツやダルンダルンのTシャツしか着ていなかったのです。
それを貰うと同時に、大人への階段を登れた気がしました。
それでいざ帰って着てみると、左腕のガントレットボタンが少しだけ"欠けて"いた事に気づきました。それに気づいたと同時に、愛着が湧いたのです。
言葉通り、自己投影です。
それからというもの、オーバーサイズに憧れれば、これを着てレディースのガウチョパンツを履き、スキニーに憧れればこのシャツとスキニーを履き、今となれば、ネクタイとこいつ、そしてスラックス。
数々のスタイルを一緒に作ってきてくれた子なんです。もちろん、それだけ着ていれば、カフス下は擦り切れてしまうわけです。
そこにも愛着が湧いて、ずっと側に置いてあるシャツなんです。
ただ、このシャツを頂いた友達とはここしばらく会っておらず、連絡も取っていなくなってしまっています。と、言いますか、自分から距離を取ったのです。自分が忙しいからって突き放す子どもだった。そんな事すら忘れていました。
自分への戒めとしても、この子は存在してくれないといけないのかも知れません。
p.s. ベージュ系のシャツは、生地によっては汗かく時期に着たら汗染みがどえらくなるから、防汗対策はしたほうが良い。
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